第41話:奴隷売買四

 全ての客が帰る翌日まで待って、性奴隷に落とされた女性達に事情をはなした。

 その時までに、この街にある売春宿の全てを制圧してあった。

 あまりの怒りに、もう力を制限する気など毛頭なかった。

 少なくともこの街にいる間は、魔力を惜しむことはない。

 この街を繁栄させているが、同時に女子供に地獄の苦しみを与えている悪党共は、一気に滅ぼすことにしたのだ。


「今まで貴方達を苦しめてきた連中は、このように無力な状態にしている。

 今までやられてきたことの復讐を、思う存分やればいい。

 この通り、奴隷契約書は無効にしてある、もう貴方達は自由だ」


 俺はそう言って奴隷契約が無効になった証文を見せた。

 この街を預かる代官や役人が、悪党共と結託して女子供に結ばせた契約だ。

 いや、代官や役人も悪党だから、一緒に悪党共と表現すべきだろう。

 今は領主に報告されないように苦痛地獄にだけ落としているが、後でこの人達の自由にできるように連れてこよう。

 経絡を突いて痛覚だけを亢進させて、視覚も聴覚も臭覚も味覚も奪っているし、筋力も十分の一にまで低下させているから、女子供でも簡単に勝てる。


「家に帰るなら私の仲間に護衛させて送り届けさせよう。

 新たな街で一から生きていきたいのなら、知り合いが領主をしている、クレイヴン城伯の領都にまで送り届けさせる。

 そこには俺が領主からもらった屋敷があるから、安心して暮らすことができる。

 家に帰るのが嫌で、クレイヴン城伯領に行くのも嫌なら、俺の仲間にずっと護ってもらう方法もあるが、その場合は住む家がダンジョンか魔境の近くに限定される。

 俺の仲間は魔獣専門の猟師だから、それ以外の仕事では生きていけないからな」


 これから莫大な金を配るが、その金を醜く奪い合って被害者同士が争うような事だけは避けたい。

 これだけは毎回細心の注意を払っている。

 同時に、あまりに不幸な記憶を刻み込まれて心が壊れた女子供には、意識体ドッペルゲンガーにマンツーマンで世話をさせなければいけない。


 すでに殺されてしまっている不幸な女子供の家族を確認して、善良な人達なら見舞金を渡したいし、女子供を売って利を得たような家族なら、それ以上不幸な女子供が生まれないようにしなければいけない。

 それだけの事を行うのに必要な意識体ドッペルゲンガーは創り出している。

 後は目の前にいる悪党共を、被害者の女子供に処分させるだけだ。


「私は家に帰らずクレイヴン城伯領に行かせてもらいます。

 私を売った金で酒を買うような父親のもとには帰りたくはありません」


「私は人知れず静かにくらしたい……もう誰とも関わり合いになりたくない……」


 色々な考えの女子供がいるが、傷の大きな女子供ほど記憶を消した部分が多いから、意識体ドッペルゲンガーに世話をさせなければいけない。

 後の事は意識体ドッペルゲンガーに任せて、次の場所に向かおう。

 そこも一刻を争う状態になっている。


「では、後は好きにしてくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る