第82話:超強化型ドッペルゲンガー

 魔宝石の圧縮強化に成功した俺は、その圧縮強化した魔宝石を百個使って、超強化型ドッペルゲンガーを創り出した。

 古竜の魔晶石を基本に属性竜と亜竜の魔宝石を圧縮強化している。

 一つだけでも古竜相手に互角以上に戦える。

 それを百個も魔力増幅魔法陣に配置してあるのだ。

 恐らく古代竜が相手でも互角に戦ってくれるだろう。


 そこまで強い超強化型ドッペルゲンガーを送らなければいけない場所。

 以前からどうしても心配だった場所、そこが大魔境の奥深くだ。

 神が人類を滅ぼす覚悟で公平に扱うと言って、大魔境の魔獣や竜をスタンピードさせている状況で、コボルト族やオーク族がどうしているのか心配だった。


 人間のいる世界にコボルト族とオーク族の気配はない。

 誇り高い彼らがこの機会に人族を襲うとは思っていない。

 だが大魔境の環境が大きく変わっているのだ。

 奥深くに住んでいた龍種が、神に唆されて人族を滅ぼすために移動したら、移動に巻き込まれて大集落を破壊される可能性もある。


 龍種が移動しなくても、現実問題として古竜は移動している。

 純血竜や属性竜までもが家族的な群れで作って移動している。

 亜竜なら群れが相手でも互角に戦えるコボルト族とオーク族でも、属性竜の群れが相手では生き残るのが精いっぱいだろう。

 純血竜の群れが相手では全滅の恐れすらある。


 まあ、彼らがそう簡単に滅びるとは思えない。

 まして純血竜や属性竜は神に唆されて人族を襲っているのだ。

 純血竜や属性竜の進路さえ阻まなければ、コボルト族とオーク族が襲われる心配はないと思う。

 問題は彼らの誇り高さが災いになってしまう事だ。


 自分達の集落を護ろうとして戦いを挑んだらとんでもない被害を受ける。

 戦士の多くが戦いで死んでしまい、大集落が破壊され魔獣を防ぐ防壁がなくなった状態になってしまったら大変だ。

 大半が老人や女子供だけになってしまったら、いかに精強なコボルト族やオーク族でも滅びかねない。


 正直な気持ちを言えば、人間よりも彼らの方がこの世界の支配者に相応しい。

 彼らがリーダーとなって人型生物を率いるべきだと思う。

 その方が人族の性根も正されると思う。

 上に立つべき者が誇り高ければ、徐々に人族も誇り高くなれるように気がする。

 少なくとも今の王侯貴族が上に立っているよりはいい


 俺は彼らとの連絡を取るために、自分と全く同じ姿形の超強化型ドッペルゲンガーを創り出して大魔境に送った。

 強化型ドッペルゲンガーは、自分とは違う姿形に偽装して人族の都市に送り込んだが、今度はそのままの姿で送り込んだ。

 どうか無事でいてくれと念じながら。


 

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