第11話:脱出

「あの、でも、ブルーノさん」

「街からでるには小金貨一枚も必要になるんです」


 新人達が絶望的な表情で言い出した。

 そんな事だろうとは思っていたが、小金貨一枚は高すぎる。

 こいつらは大人しく従っていたが、中には反発する者も出てくる。

 こんなやり方は馬鹿のやり方のなのだが、今権力を握っている奴は馬鹿なのだろう、そう長くは権力の座にはいられないはずだ。

 それとも反発する冒険者や領民を押さえつけるだけの戦力があるのか?


「どうせ公園や広場に入るにも金を取るんだろう。

 しかも公園や広場で火を使ったら別料金を取られる、そんな所だろ」


「その通りなんです、ブルーノさん」

「領民に対する税も十倍になってしまって」

「食料品も宿代も十倍になっちまって……」


「全員分の金貨は俺が立て替えてやる、他の街に行って稼いだら返してくれればいいから、今は心配せずについて来い」


「「「「「ありがとうございます、ごちそうになります」」」」」


 浮浪者と見まごうほどの冒険者達が、一斉に元気になったのを見て、ミュンが目を白黒させている。

 この状況を見て、現金な態度だと言う者がいるかもしれない。

 餓死寸前だった状況から、ここまで元気になれるわけがないというかもしれない。

 でも、人間にとって希望の力とはとても大きいのだ。

 もう餓死するしかない、もしくは人を襲って金品を奪わなければいけない、そんな状況では、良識のある者は生気を失うものだ。


「こいつらの街を出る代金は俺が払う、だから邪魔をするな」


 俺達が街から出て行こうとすると、門番が邪魔しようとしたが、俺が睨みつけて脅かすと素直に城門を通してくれた。

 多分だが、中堅冒険者としての俺の顔を知っていたのだろう。

 もしかしたら今の権力者の命令かもしれないが、力づくで出て行こうとする、中堅以上の冒険者の邪魔はしないのかもしれない。

 それとも、役立たずの新人や下級冒険者は出してもいいのか?


「ひとまず干肉と乾パンを食ってろ、リンゴ酒は回し飲みしろよ。

 美味い飯は安全な所まで行ってから喰わせてやる」


 城門を出た直ぐの場所に拠点を作ったら、街の兵士に夜襲される恐れがあるので、ある程度離れた安全な場所まで移動する必要がある。

 だが今のこいつらに何も喰わせずに長距離を歩かせるのは無理なので、歩きながらでも食べることができる、携帯食料の干肉と乾パンを与えることにしたのだ。

 飲み物はワインもエールもあるのだが、ワインは高級品だしエールは俺の好みでないので手持ちの量が少ない。

 ミュンが好きだと言ったリンゴ酒と梨酒を大量購入していてよかった。


「腹が落ち着いたのなら領主殿の事を話してくれ」

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