第10話:冒険者か浮浪者か
俺の目の前には、飢えて痩せ細った多くの冒険者がいた。
冒険者ギルドに入る事もできず、希望を失った虚ろな目をしている。
ほとんどが新人と下級レベルの冒険者だ。
こんな事になった原因を一瞬で色々と考えるが、考えるよりも聞く方が早い。
「ブルーノさん、これはいったい」
ミュンが不安そうな顔で聞いてくる。
当然だろう、俺から聞いていた話と全然違うのだ。
俺の話通りなら、浮浪者と見間違えるような冒険者が、道端に溢れているわけがないから、俺が嘘をついてミュンを騙したという考えに至ってもおかしくはない。
「俺がここを離れてからとんでもない事が起こったようだ。
早急に理由を知りたいから、直接話を聞いてみよう」
「はい!」
「おい、お前らなにやってんだ?
俺が旅に行っている間に何かあったのか?
腹が減っているなら飯を奢ってやるから、理由を話せや」
「あ、ブルーノさん、本当ですか」
「本当だ、ブルーノさんだ、何でも話しますから飯食わせてください」
「俺も、俺も話します、だから飯食わせてください」
「僕も、僕もお願いします、もう四日も食べてないんです」
冒険者ギルド前にたむろしている連中が一切に話しだした。
このままでは収拾がつかないから、とにかく安心させなければいけない。
「慌てるな、騒ぐな、ちゃんと全員に飯食わしてやるから、順番だ順番。
俺が約束を破った事が一度でもあったか、大丈夫だから落ち着け。
まずは冒険者ギルドに入って落ちつこうや」
多分、俺の予想通りなら、ここで制止する奴が現れるはずだ。
「あ、駄目です、ブルーノさん」
「そうです、入っちゃ駄目です、ブルーノさん」
「ブルーノさんは旅していたから知らないんですよ」
「今の冒険者ギルドは、入るだけで入場料が必要なんです」
「それも小銀貨一枚ですよ、依頼を見に入るだけで小銀貨一枚いるんです」
「ダンジョンに入るのにも大銀貨一枚も必要になるんです」
「俺たち新人ではダンジョンに入っても赤字です」
「新人だけじゃない、若手やロートルはもうダンジョンに入れませんよ」
予想通りの答えが返って来たな。
こんな事だろうとは思っていたが、こんな事をあの領主が許すわけがない。
最悪の結果になっていなければいいのだが、その可能性も考慮に入れておく必要があるか?
いや、思考の時間を使うよりは聞く方が早いと決断したはずだ。
「分かった、分かった、分かった。
旅の途中で狩った獣や魔獣をたくさん持っているから安心しろ。
そんな状態なら、街の商店や食堂は軒並み値上げしているんだろ。
街の中にいたら大損してしまう、夜営になるが城外で話を聞こう」
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