第44話:奴隷ハンティング三

 一気に厳しい尋問を行い、聞き出せる事は全て白状させる。

 今までは全部自分でやらなければいけないと思っていた。

 人間を殺す以上、同じ人間である俺がちゃんと取り調べないといけないと思って、ドッペルゲンガーに任せないようにしてきた。

 だがそのために時間がかかってしまい、俺がこだわりを持たなければ助けられたはずの人が、殺されてしまっていたのは間違いない。


 正直に言えば、ドッペルゲンガーが信じきれていなかった。

 俺自身の意識を持った存在とはいえ、多くのドッペルゲンガーが尋問している場所に立ち会って、正しい方法で尋問しているかを確認したわけではない。

 冤罪で人間を殺してしまう事や、情状酌量するべき理由を切り捨てて殺してしまう事があるかもしれないと、心底怖かったのだ。

 非情に徹して悪党を殺すことができるのは、自分が直接尋問して悪党だと確信できるからこそなのだ。


 だが、ようやく覚悟が定まった。

 俺が悪人に天罰を下すと決めた時に、魔法袋に貯め込んだ魔宝石や魔晶石を使ってドッペルゲンガーを作って大陸中に放っていたら、少なくともここで殺された人のうち千人弱は助けられていたのだ。

 冤罪で誰か一人を殺してしまうことになっても、千人の人を助けるべきだった。

 こんな事を元いた世界で口にしたら、罵られて社会的に抹殺されていただろう。


「ここにいる連中が君達を殺して快楽に耽っていた悪党だ。

 復讐したい者は好きにすればいい、責任は俺がとる。

 誰かを殺すのも傷つけるのも嫌だと言うなら、無理に復讐する事はない。

 ここに君達の奴隷契約書があるが、この通り全て無効になるように手続きが済んでいるから、もう君達は自由の身だ。

 家に帰りたい者は、俺の仲間が送り届けよう。

 俺の知り合いの治めている領地があるから、そこで暮らしたいという者がいるのなら、俺の持っている屋敷まで仲間が送っていく。

 誰も自分の事を知らないところで暮らしたいというのなら、俺の仲間が適当な所まで送り届けよう。

 誰かが側にいてくれないと不安だと言うのなら、俺の仲間が一生側にいる。

 だから何も心配はいらない。

 ああ、そうだ、生活費の心配はしなくていい。

 悪党共から金銀財宝を奪っているから、それを公平に配る」


 俺は最近始めた一生面倒を見る条件を説明をした。

 今までは助けてお金を与えて安全な場所に送ったら手を放していた。

 だがそれではいけないと思い始めたのだ。

 あまりにも悲惨な状況に置かれていた者達は、治療のしようがないほど心が壊れてしまっていて、一生側にいてあげなければいけない人がいるのだ。

 その為には俺が魔宝石と魔晶石を集める必要があるな。

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