第14話:自白

 俺は全力を使って領主本丸に入り込んだ。

 エクセター侯爵家の手先が入り込んでいる所までは、問題なく入れた。

 問題は裏切者の弟でも入れない最奥にある領主の私室な。

 領主セシル城伯ウィリアムから密かに暗殺依頼を受けた時には、誰にも見つからないようにその私室には出入りした事がある。

 問題は今の状態でその私室にまで入ることができるかだが……


「ここまでか、直接顔を見る事はできないが、生きていたならいい。

 以前した約束を果たさせてもらうから、死ぬんじゃないぞ」


 直接顔を見る事ができればよかったのだが、厳重な魔術結界に阻まれてしまった。

 生命探知魔術だけは中まで効果があり、何とかセシル城伯の生存が確認できた。

 恐らく外部の味方が領主の生存を確認できるようにしているのだろう。

 結界を破壊してでも領主を助けに入りたかったが、結界を無理矢理破壊して入ってしまうと、後々の護りが心配だ。

 それに、敵を欺くために生存を偽装しているか可能性もあるから……


「さて、エクセター侯爵に領地と民を売り渡し、兄を殺してでも見せかけの領主の座を手に入れようとする腐れ外道に全てを白状してもらおうか」


 あまりの怒りに独り言が出てしまった。

 俺は腐れ外道、トマスのようなモノが大嫌いなのだ。

 俺には大嫌いなモノに手加減する気など毛頭なかった。

 地球の歴史で行われた、俺の知っている全ての拷問方法を使って白状させる。

 その為には護衛や側近は邪魔だった。

 必要なら一切の手加減はしないが、全員を殺す気もなかった。

 まずは圧倒的な魔力を使って、絶対的な麻痺睡眠魔術を領主本丸に放った。


「ゆるしてくれ、許してくれ、もうやめてくれ、全部言う、全て話す」


 情けない事に、最初の拷問をしただけで、トマスはペラペラと話しだした。

 エクセター侯爵に誘われて、実の兄に毒を盛った事はもちろん、領都の民に莫大な税をかけて、払えなくなったら奴隷にしてエクセター侯爵家に送る事も。

 全ての悪業は、エクセター侯爵の命令で行っていたことを白状した。

 同時に今回の件に加担していた陪臣騎士や陪臣徒士、使用人の名前を白状した。

 俺はその自白を、魔術で領都の空に映像と音声で流した。


「どれほどの拷問をくわえようとも、何も話さんぞ。

 俺は誇り高いエクセター侯爵の騎士だぞ、その俺に危害を加えると、エクセター侯爵家と戦いになると分かっていてやっているのか」


 精一杯虚勢を張っているが、実際には臆病なのが一目でわかった。

 恐らくエクセター侯爵の家臣の中では家柄がいいのだろう。

 能力ではなく家柄で役職を得た根性なしだ、少し痛めつけたら色々話してくれる。

 領民にエクセター侯爵家に対する敵意を植え付けたら、セシル城伯が目覚めた時に、責めるにしても護るにしてもやり易くなるだろう。

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