第51話:コボルト四
俺は金色のコボルト達の案内で彼らの村に向かった。
護衛コボルト達の俺に対する対抗心なのか、周囲への警戒をしながら走る限界、全力に近い速さで村に向かった。
正直その速さは俺が知っているコボルトとは比較にならない速さだった。
速さだけでなく、持久力にも目を見張るものがあった。
途中で遭遇する魔獣を狩る強さも、今日見つけた全長平均一メートル体重二百キロくらいの亜竜なら、連携する事で狩れるかもしれない。
「ここが私達の村よ。
私よ、門を開けなさい、大丈夫、この人間は薬師よ、疫病の薬を持っているわ」
最初は一緒にいる俺を警戒していた門番も、金色のコボルトの言葉を信じて、警戒は緩めないものの、命令通り城門を開けた。
金色のコボルトは村と言っていたが、その規模は俺の想像していたより大きい。
村というよりも城壁都市と言っていい大きさだ。
まあ、村を囲んでいるのは石の城壁ではなく、木と土の土塁と木の城壁だがな。
「薬師殿は私についてきてくれ。
疫病に侵された者は、家族にうつさないように隔離されているのだ」
人間達は人型魔族の事を馬鹿にしているが、十分文化的に過ごしている。
疫病患者を隔離して病気を広めない事を知っているし、病人を見捨てない情もあるから、平気で疫病患者を川や山に捨てる人間よりもよほど立派だ。
人間は都市の道に平気で糞尿を捨てるが、コボルトはちゃんと糞尿を処理しているようで、城内がとても清潔だから人間よりも文化的と言える。
「この辺りが疫病に侵された者達を隔離している一角になる。
最初は病棟だけに集めていたのだが、あまりにも数が多くなり、病棟周辺から元気な者を移動させて、病棟周辺を隔離地域としたのだ」
この村が本当に素晴らしいリーダーに指導されているのが分かるな。
多分この金色のコボルトの一族なのだろうが、尊敬に値する指導者だ。
そういう立派な指導者に手を貸したくなるのが俺の悪い性分だ。
指導者が立派でも、一族や種族全体が立派じゃない事が多いから、あとで色々な厄介ごとに巻き込まれてしまうのだが、つい何度も同じ失敗を繰り返してしまう。
「そうか、それは賢明な判断だし、立派な行いだな。
種族は違うが、尊敬に値する立派な指導者、リーダーだと思う。
そんな指導者に対しては、それ相応の礼を取った行動をすべきだと思っている。
まずは一番近い所にいる患者から見させてもらおう」
「そうか、そう言ってもらえると私も嬉しいし、父上を誇り高く思えるな。
では父上に負けないように、私も立派に役目を果たさせてもらおう。
ここが一番近い疫病患者の寝ている家だ」
「お待ちください、姫君に疫病がうつっては大変です。
案内は私がいたしますから、姫君は一刻も早く食糧を族長に届けてください」
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