第5話:暗殺指令

 一瞬だけどうするべきか判断に困った。

 最後まで自分一人で対処するべきか、依頼主に判断を仰ぐべきか。

 今回は想定外に早く証人が三人も確保できた。

 七日七晩眠らせる魔術をかけた刺客二人も、何時でも起こす事が可能だ。


「分かったよ、安全な隠れ家に連れて行ってあげるから、安心しなさい」


 俺は動転しているミュンに優しく声をかけて、刺客二人は亜空間に隔離した。

 今のミュンを亜空間に入れては心に大きな負担がかかるので、お姫様抱っこをして依頼主の屋敷まで連れて行くことにした。

 自分とミュンには隠形に必要なあらゆる補助魔法をかけて、依頼主に判断を仰ぐべく屋敷に向かった。


「そうか、冒険者ギルドのマスターまで悪事に加担していたか。

 これを表に出したら、私を非難する者が出てくるだろう。

 内々に処分しなければいけないが、やれるか?」


 依頼主であるこの地方の領主が質問してきた。


「最初に勇者パーティーをダンジョンで殺してモンスターに喰わせます。

 それがギルドに知られる前に、マスター以下の幹部連中を殺してモンスターに喰わせれば、下っ端の職員は逃げ出すでしょう。

 逃げ出したところを追いかけて殺していけば領主殿の汚点にはならないでしょう」


「ふむ、それならば非難されたとしても反論は容易だな。

 ブルーノならば安心して任せられるが、問題はミュンという職員だな。

 全てを隠蔽するなら密かに殺すべきだが、ブルーノならどうする」


「私ならば、自分の良心が摩耗してしまわないように、生かして使います。

 自分に不利益だからと殺すことに慣れてしまったら、今回の連中のような外道になってしまいますから」


「自分が健全であるために生かして使うか、ふむ、それがよいだろう。

 だがこの領地にいてはどこから情報が洩れるか分からん、ブルーノが使ってくれないか?」


「正直足手纏いなのですが、どうしても預かれと申されますか?」


「ふっふっふっふっ、ブルーノが私に良心を残せと言ったのだ。

 私もブルーノに言ってやろう、健全であるために預かれ」


「追加報酬を頂くことになりますが、宜しいのですか」


「よかろう、領主館で雇っている侍女の給金五人分を毎月渡そう。

 定期的にブルーノの顔も見たいし、それでどうか」


「その時受けている依頼によっては、半年くらい顔を見せられない時もありますが、それでも構わないのですか」


「今まで通りであろう、構わんよ」


 しかたがないな、ミュンのような善人が口封じされる可能性は、完全に排除しておきたいから、ここに置いておくよりは俺の手元に置く方がいいだろう。

 三日ほど眠らせておけば、今回のターゲットは皆殺しにできる。


「では、ミュンは引き取っていきます。

 今日中に十人ほど殺しますので、表向きは厳重に捜査してください」

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