第64話:オーク四

「素晴らしい、これほど劇的な効果があるとは思わなかった。

 何をどれくらい御礼に差し上げればいいか言ってくれ。

 できる限りの事をさせてもらおう」


 オークの大族長は、最初に治療薬の効果を確認したいと言った。

 彼にすれば、一番大切なのがオーク族の生死だろう。

 それが何より一番大切だからこそ、人族の俺を丁寧に迎えてくれたのだ。

 俺も最初からその心算だったから、何も言わずに疫病に侵された者達が治療されている場所についていった。


 そこはコボルト族の状況とあまり変わらなかった。

 治癒術師と薬師が疫病に侵されたオーク族を看病していた。

 オーク族の時と違っていたのは、奥地にあるからか患者が比較的少なかった。

 それと個体の体力がコボルト族よりも強いからか、少し症状が軽い気がした。

 

 いや、恐らくだが、保有していた魔宝石や魔晶石が多かったからだ。

 コボルト族の治癒術師は魔晶石も魔石持っていなかったが、オーク族の治癒術師は魔晶石を持っている。

 個体の強さも大きく影響しているのだろうが、保有している魔宝石や魔晶石が多かったから、患者を重症化させないでいられるのだ。


「魔晶石や魔石を使って重症化させないようにしていたのですか」


 俺は大族長に確認してみた。


「ああ、我らは雑食だから、どうしても魔獣を狩らなければいけない訳ではないが、必要ならば亜竜種であろうと狩るだけの強さがある。

 普段それほど使用しない魔宝石や魔晶石を蓄えていたのと、疫病が流行り出してから積極的に魔宝石や魔晶石を集めたことで、重症化させないで済んだ。

 だが完治させる事はできないでいたから、ジェイコブ殿には感謝している」


 俺はコボルト族を助けた時に使うことにした、ジェイコブという偽名をオーク族にも使うことにした。

 これで終わりではないかもしれないから、大魔境で出会う人型魔族にはジェイコブという名で通すことにしたのだ。


「では、薬の代価は魔法石や魔晶石、魔石や素材で支払って欲しい。

 生き物の命を無駄にするわけにはいかないから、素材は全部この魔法袋に入れてくれればいい、定期的に回収に来る。

 それと代価の支払いが終わったら、普通の交易ができないだろうか。

 人族が作るモノで欲しいモノがあるのなら、俺が手に入れてくる。

 その代価として魔法石や魔晶石、魔石や素材を渡して欲しい」


 俺はオーク族との交易を提案してみた。

 誇り高いオーク族とは、これからも有効な関係を続けたい。

 いや、万が一また人族が悪さをした時に、逸早く知って手助けしたくなったのだ。

 恵まれない不幸な立場の人族を助け、悪人に天罰を下すよりも、誇り高いオーク族やコボルト族と交易する方が楽しい。

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