第46話:大魔境二

 俺は急いで大魔境の奥深くに向かった。

 いくら大魔境に生息する魔蟲や魔獣の成長が早いとはいえ、あまりに乱獲すれば一時的に数が激減してしまうのは当たり前の事だ。

 そんな事をしてしまうと、人型の魔族が食糧難になってしまう。

 食糧難から今保たれている魔族同士の均衡が崩れてしまい、戦争を勃発させてしまうようなことになったら、俺の不完全な良心が痛む。


 だから俺は大魔境の奥深くにある大ダンジョンで狩りをすることにした。

 この世界のダンジョンは、魔力を使ってダンジョン内に魔獣を創り出す。

 まるで前世のラノベやアニメのように、ダンジョン魔獣を斃すとドロップ品が出てくるという、ご都合主義の状況だ。

 俺は前世で読んだことはないが、ダンジョンコアに転生するという話があった。

 俺がこうして転生しているのだから、そんな事がないとは言い切れない。


 大ダンジョンに向かうまでに、有り難い事に陸上種のドラゴンの群れに遭遇した。

 この世界には多くの種族に分かれたドラゴンがいる。

 東洋で考えられている龍種と西洋で考えられている竜種だけでなく、陸海空に分かれた種族が数多くいる。

 龍種はまだあまり狩っていないが、竜種は結構狩った。

 前世では滅んでいた、恐竜が亜竜として数多く魔境に生息しているのだ。

 これも俺のような転生者が想像して創り出したのかもしれない。


 俺にとっては好都合の獲物だった。

 亜竜種とは言え竜なので、人型の魔族には強敵で、食料として狩れるような相手ではなく、むしろ人型の魔族が食料にされてしまうのだ。

 亜竜ならば俺が狩っても何の問題もない。

 亜竜は血の一滴まで高価に売る事ができるし魔核も魔宝石と呼んでいいくらいだ。


 眼の前にいる亜竜は百頭前後の群れで卵を護っている。

 身長の平均は十メートルくらいで、体重は五トンくらいだろうか。

 皆殺しにするのが一番儲かるし魔宝石を確保できるのだが、今後の事を考えれば絶滅させるのは悪手だ。

 一気に大量の素材と魔宝石が手に入る、群れを作る亜竜は乱獲すべきじゃない。

 俺は群れの中を走り抜けながら、雄と生命力の弱い雌を五十頭狩った


 予想以上の成果を得ることができたので、ここで新たに強化意識体ドッペルゲンガーを作ってもいいのだが、まずは使ってしまった魔宝石と魔晶石と魔石を完全に補給しておきたいという、消極的な気持ちになってしまう。

 その臆病なくらい慎重な性格が、助けられる人を助けられなかった原因なのだが、転生しようと生まれ持っての性格を変える事はできないようだ。

 考え方を変えて蓄えていた魔宝石と魔晶石と魔石の半数を吐きだし、自分で確認しないで天罰を行う決断をした事だけでも、俺にとっては大きな変化だ。

 これ以上の無理はせずに、急いで大ダンジョンに向かった。

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