第22話:孤児の買い戻し
処罰すべき者の経穴を突き終わったら、次にしなければいけない事がある。
エクセター侯爵領などに売り払われた子供達の買い戻しだ。
資金は問題ない、魔境やダンジョンで稼いだ金が有り余るほどある。
問題は俺が表に出たくない、それだけだった。
刺客を本職と決めた以上、できるだけ表には出ない方がいい。
冒険者という仮初の姿は、セシル城伯領だけで十分だ。
「ミュン、後の事は頼んだよ」
「はい、任せてください、ブルーノさん」
ミュンにだけは俺が出かけることを伝えておく。
非常事態の時に、俺を頼ることができないと知らせておかないといけない。
孤児院で雇っているというか、俺の結成した冒険者クランの所属にしている、駆け出しの冒険者や下級冒険者には、俺が残っている事にしてある。
人間とは愚かで弱い生き物だから、俺がいないと思ったら、ミュンや孤児達に悪事を働く可能性があるからだ。
だから、魔術でドッペルゲンガーを創り出して偽装しておく。
「お前達にはトマス達のせいで売られた孤児達を買い戻しに行ってもらう。
買い戻したら護衛をして無事に孤児院まで連れて来てくれ。
これは俺からクランへの正式な依頼だから、達成すれば報酬が出る。
同時にクラン内のレベルにも加算される。
だから命懸けで受けてもらう事になる、分かったな」
「はい」
全員が本気でやる気になっている。
クランマスターである俺に気にいられたいというのもあるだろう。
純粋に報酬額がいいというのもあるだろう。
中には本気で孤児に同情している者もいるだろう。
俺にとっては理由などどうでもいい、孤児を助けてくれるならな。
「では今から希望者に買い戻しのための資金と必要経費を渡す。
念のために言っておくが、買い戻し資金と必要経費を持ち逃げした者、誤魔化した者は俺が地の果てまで追いかけて殺す、分かったな」
「「「「「はい」」」」」
冒険者の中には、人身売買にかかわる女衒や奴隷商人に儲けさせるのはおかしいと考える者もいるだろう、俺にもその気持ちがないわけではない。
だが、そういう者がいなければ、確実に餓死する者がいるのも確かだ。
買い取る者がいないと、生まれて直ぐに子供を殺す親や、戻って来れない森の奥に子供を捨てる親が、どうしても出てくるのだ
少しでも子供達が生き延びる可能性を残すためには、必要悪として見逃さなければいけない連中もいる。
「もっとも、親を陥れて子供を売らせるような奴や、買った子供を虐待するような連中を許す気は毛頭ない。
地獄の苦しみを味わせてから殺す、まずは鉱山奴隷か男娼奴隷にしてやるさ。
おっといけない、独り言が出てしまった」
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