第8話:始末

「じゃあ、ここに隠れていてくれ。

 それとこれはダンジョンで手に入れた結界の魔道具だ。

 これを起動させていれば、誰もこの中には入ってこられないから」


 俺は信用できる宿にミュンを置いて今回の総仕上げに出かけた。

 だが信用できる宿だからといって油断するような事はない。

 ドアと窓を絶対に開かないようにする限定された防御の魔道具と、部屋全体に強固な防御結界を展開する魔道具を渡しておいた。

 それに加えて、防御結界魔道具が攻撃を受けたら俺に知らせを送る魔道具と、切り札となる魔道具も渡し、何があってもミュンを守れるようにした。


★★★★★★


「ちっ、今度もレッドドラゴンかよ、もっと弱いモンスターを出せや」


 某王の落胤を詐称する偽勇者のアーサーがまた身勝手な事をほざいている。

 偽聖女のジュリアと女魔術士のダーシィが、俺の時と同じように荷役をレッドドラゴンの方に押し倒そうとしたが、隠蔽魔術で完璧に隠れた俺が手を引いて倒す。


「「きゃっ」」


 俺に引き倒されたジュリアとダーシィが声を上げたが、それだけではすまない。

 まったく想定していなかった不意討ちを喰らって、手をつく事もできずに顔面を強打し、前歯と鼻骨を折って昏倒した。


「なにやってやがる!」


 急いで逃げようとしていたアーサーと獣人のジャガーが悪態をつくが、二人を見逃す気はない、横から膝に蹴りを入れて粉砕してやった。

 流石に盾役のローガンと女弓兵のネヴィアは、何かおかしいと気がついたようだが、この状態ではろくに抵抗もできずにレッドドラゴンの餌食になるだけだ。

 ケガした四人を見捨てて逃げようとしたが、それを許す俺ではない。

 生贄にされそうだった荷役を左肩に抱えて入り口の方に走り、ネヴィアの下顎を粉砕する鉄拳を加えて戦えないようにして、ドアを閉めてやった。


「開けろ、開けないと殺すぞコラ、開けろ、開けてくれ、お願いだ、頼む、金をやる、二万ゴールドやるから開けてくれ。

 半分だ、全財産の半分だ、半分やるからここを開けてくれ!

 ウギャアアアアアア」


 唯一五体満足だったローガンが最後まで泣き叫んでいたが、ケチな奴だった。

 自分の命の代価が全財産の半分とは、ケチにもほどがあるだろう。

 これで今まで殺された荷役の仇は取れた。

 俺の手で殺すのは簡単だが、復讐とは同じ方法でやり返す事だというのが俺の信念だから、面倒でもボス部屋に閉じ込めてモンスターに殺させなければいけない。

 襲い来るモンスターに恐怖する事も味合わせないとな。

 さて、後はこの件に関係したギルドマスターと職員達を、同じようにボス部屋に閉じ込めてモンスターに始末させる事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る