第38話:奴隷売買一
子爵領で知った悪事の中に悪質な奴隷売買があった。
子爵領で行われていた旅人誘拐では、被害者は死傷率の高い鉱山で働かせていたので、他の奴隷売買業者に横流しされていたのは、鉱山奴隷に向かない女子供だった。
兵士の愉悦のために、高値のつかない女は鉱山に残されていたが、横流しした方が利益を生みそうな女子供は、売春関係者の奴隷業者に売られていた。
直ぐに助けに行きたかったが、鉱山の被害者達を放置するわけにはいかない。
特に俺のやった事の結果で被害者同士が争うような事だけは絶対にさせられない。
だから新たにドッペルゲンガーを創り出して派遣した。
俺の創り出すドッペルゲンガーには幾種類かある。
魔晶石を核とした肉体を持つ新たな生き物として創り出す事もできれば、魔晶石を核にして戻って来たら再び俺が取り込める意識体として創り出す事もできる。
意識体のドッペルゲンガーは、肉体のない幽霊のような存在で、こちらからの攻撃方法も相手からの攻撃方法も、とても限られてしまう。
限られてはいるが、核となった魔晶石に入っている魔力の範囲で魔術を駆使する事もできれば、幽体の一部を強化して経穴を突く事もできる。
反則としか思えない存在なのだが、想像力と想いと魔力量で全てを具現化できる世界だからこそ、ラノベやアニメで見た全てが再現できたのだ。
特に悪質な裏技は、意識体のドッペルゲンガーが魔石を持つ魔獣を斃し、その魔石から魔力を補充する事で、核とされた魔晶石の魔力量を超えて活動できるのだ。
核とする魔晶石も蓄えられる魔力量の多い貴重な物としておいて、更に一般的に屑扱いされる魔石を魔力補充用に大量に渡しておくという裏技もある。
そんな裏技ができるので、大切な場所に派遣するドッペルゲンガー以外は意識体にする事が多く、今回も意識体を派遣した。
そんな事をするためには大量の魔晶石や魔石が必要になるのだが、復讐や天罰を始める前に魔境やダンジョンで十分な経験を積んでいたので、その時に手に入れた莫大な数の魔晶石や魔石が魔法袋に蓄えられている。
いや、魔晶石や魔石だけでなく、魔宝石と呼ばれる貴重な魔核も数えきれないほど魔法袋に蓄えられているのだ。
「さて、そろそろ彼らの体力も回復したようだし、天罰を始めるか。
今回の天罰対象者には、悪質な奴隷業者だけでなく、悪質な売春宿の経営者もいれば特殊な性癖も持つ者もいるようだな。
ちょっと天罰対象の範囲が広まり過ぎてしまったから、意識体の数を増やそう。
情けない話だが、ミュンと知り合ってから独り言を口にしてしまう。
それとも孤児達の御世話をするようになった所為かな。
孤児院に派遣しているドッペルゲンガーを引き上げた方がいいかな。
だが、それでは孤児院の事が心配で天罰に支障をでるかもしれないし……」
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