第29話:孤児院の日々五・ミュン視点
「引っ越しの用意をしておきなさい」
筆頭家老と呼ばれていた老士族と話し合われた後で、屋敷に戻ってたブルーノさんが言い切られたので、ここの領主は見捨てられたのだと思います。
後々殺されるかどうかは分かりませんが、二度とブルーノさんがここの領主を助ける事はないのだと分かりました。
どれほど時間と労力とお金をかけていようとも、信用信頼できない領主が治める所に、大切な子供達の家を置いておく気はないのです。
「最初に謝っておかなければいけないことがある。
ここの領主は俺が思っていた以上に愚かで無能だった。
ここに拠点を置き続けるのは危険だから、もう少しマシな領主が治めるダンジョン都市に孤児院を移す。
皆その心算で準備してくれ、移動に必要な魔法袋や馬車は俺が用意する。
向こうの屋敷の準備でき次第移動してもらうが、皆は持っていく私物の片づけだけをしていてくれればいい」
ドッペルゲンガーのブルーノさんの言葉を聞いて、大きい子供達が少し不安がりましたが、ブルーノさんが常に側にいて優しい言葉をかけてくれるので、子供達の不安も徐々に解消されました。
クランの冒険者は全く不安など感じていないようでした。
すでに彼らの収入の大半が薬草や毒草を集めて薬を作ることになっています。
後は食糧用に弱い獣や魔獣を狩るだけになっています。
別にダンジョンに入る必要もなくなっていたのです。
「ブルーノさん、噂が色々と流れているのですが」
徐々に引っ越しに準備が整っていたある日、私は思い切ってブルーノさんに噂の真相を聞くことにしました。
私達に難癖をつけた陪臣騎士が、その翌日から消えているのです。
噂ではエクセター侯爵家に加担していた証拠が見つかって、領主に族滅させられたという事です。
それだけではなく、その屋敷が領主から孤児院に寄付されたというのです。
「ああ、そうだね、色々な噂が流れているけれど、流れて困る噂もあるのだ。
私が領主の恩人だという噂は、エクセター侯爵殺しにつながるからね。
筆頭家老の馬鹿が恩人などと口走らなければ、もう少し穏やかな収め方もあったのだけど、王家や他の貴族はもちろん、闇社会の人間にも知られては困るのだよ。
特にエクセター侯爵殺しの実行犯が孤児を大切にしていると知られてしまったら、孤児を人質に取られるくらいならまだましな方で、復讐に殺されてしまうかもしれないからね、口封じが必要だったのだよ」
ブルーノさんの話を聞いてようやく納得できました。
領主はもちろん、その側近が馬鹿で口が軽いとなると、これ以上ここにいるのは危険すぎますね。
でも、いったいどこに移動するのでしょうか。
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