2ロリ 二日目

 夜が明けた。

 蜘蛛の毒は腕だけでなく肩にまで影響を及ぼし、肩から手先までの感覚をなくしていた。


 私は立ち上がり洞穴から顔を出す。


(近くに魔物は……よしいない)


 さすがに出発から殺されてはたまらない。

 そしてゆっくりと洞穴から出て、洞穴の上にあった小高い丘を登る。

 登っている最中に先日、いや二回目のときのプテラノドンのような鳥に見つからないように注意をしつつ登るとようやく丘のてっぺんまでたどり着く。


 長いこと登っていたがかなりの高さがあったようだ。森を見渡せる。

 しかし森はどこまで行っても森であった。

 前も右も左も後ろも、全てが緑色。

 前方の先には大きく開けた場所――湖があった。他には湖が見当たらないので私はあそこで目覚めているのだろう。

 湖より左手側は蜘蛛の縄張りだと思うので湖より左後方にはいかないようにしよう。行くならば右後方か左前方。


 そんなことを考えていると右手前方の遠くに何かが見える。

 よく見てみるとそれは大きな樹だった。


「ほわぁ」


 その樹は他の木とは比べ物にならないほど大きく、明らかに学校丸々一つが入りそうなほど太い幹。

 そして高さもバカほど高く、樹冠の頂点は遥か空――おそらく大気圏手前までは届いているのではと思うほどだった。

 どこからどう見ても他の木とは一線を画す。

 しかも近くを湖に流れている川がある。住むのに適しているだろう。


 ともかく森のさらに奥を見つめるも何もない。平原や人里が見れればと思ったが目はそこまで見れないので森しか見えなかった。

 ただ後方に大きな山脈があるのでそちらには人里はないだろう。


 とりあえず丘を降りて右手側に行ってみよう。そして巨大な樹――神樹と名付けよう――に向かってみる。他は木ばかりで何もないがあそこなら何かあるかもしれない。それに神樹に登ることができればかなり遠くまで見渡せるかもしれない。


 そして私は片方の腕を使ってなんとか丘を降り切る。そして右側を向いて真っ直ぐ進む。


 今は別に魔物に襲われていないので歩いていくとしよう。もし見つかって襲われそうになった時のために体力は温存しておきたい。



 どれほど進んだか私は適度に小休憩を挟む。

 お腹が空いた。喉が渇いた。

 何か食べたいが近くには何の果物もない。あったとして毒があるかもしれないので食べられない。

 水は湖と川にしかなかったので得られない。

 それに腕が段々と痛みが増してきた。


「っっ!!」


 私は殺気を感じて咄嗟に身を横へずらす。

 直後横を何かが通り過ぎた。


 私はそれが何かも確認せず走る。

 私の横を通り過ぎたとき、熱気を感じた。もしかすると炎の球でも通ったかもしれない。

 後ろをみると炎を纏った鷹のような鳥が追いかけていた。

 私は一角ウサギの時のようにジグザグに進む。すると鷹は狙いが定まらず炎の球を打ってこようとしなかった。


 森の中を進む。通りすぎていく木々。その中に大きな生物が見えた気がした。

 偶然鷹の炎の球がその生物に当たり、その生物は呻き声をあげる。鷹は一目散に逃げるが長い手が伸びて鷹を鷲掴み羽を引きちぎる。

 鷹の悲痛の叫びが響く。


 私はその機会を逃さずに走り続ける。

 あの怪物はヤバいと本能が叫んでいた。あの怪物は最初の熊よりも明らかに危険だと。


 後ろから鷹の悲鳴が聞こえなくなり、そして――


ドガンッッ!!

「あぐっ……!!」


 目の前に空から怪物が落ちてきてその衝撃で後ろに吹き飛ばされる。

 どうやら怪物は私を逃すつもりはないらしい。


 先ほどの衝撃で近くの木々が薙ぎ倒されて森が開ける。


 私は幼女の姿なので簡単に飛ばされて地面に体を強く打ちつけられ、動けないでいた。

 ドシンドシンと怪物が近づく足音がする。

 そして怪物は大きな手で私を掴み、腕を引きちぎる。


「あああ゛あ゛あ゛――――――ッッ!!」


 腕が無理やり千切られ、血が吹き出す。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっっ!!


 私は声にならない悲鳴を上げるも怪物はお構いなしに私のもう片方の腕を、握り潰した。


「あ゛――――ッッ!!」


 私は涙を流し鼻水を流し下からも液体を流してあまりの痛さに白目を剥いて気絶していた。

 しかし、奴はそのまま私の足を端からゆっくりと握り潰していく。


 そして私は覚醒し再び悲鳴を上げる。

 その様子を見て奴は、嗤っていた。


 奴は餌のためではない。娯楽のためにゆっくりと私を殺していたのだ。


 奴はダルマとなった私を下半身からゆっくりと捕食していった。






 私は死んだ。





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