44ロリ 見つけた

 帝都の空がオレンジ色に染まる夕方。

 私とガリアは短い時間だったが部屋を探索し満喫していた。


『食事を当ホテルで取る場合は朝食は前日、昼食は二時間前、夕食は二時間前までにはお知らせください』


 注意書きにはそう書かれてある。

 このホテルで食べる料理はどれもが一流だろう。さぞ美味しかろう。

 しかし。しかしである。

 飲み屋街で食べるガッツリ系の料理もいいのではないか?

 帝都には来たばっかりだし、せっかくだからそういうものも食べてみたい。

 ということで今夜の夕食は飲み屋街に出て食べることにした。


 私とガリアは何を食べようか、盛り上がっているうちに階段を降りエントランスに着く。


「なあちょっといいか?」

「はい、なんなりと」


 私は受付カウンターにいるスタッフに尋ねる。


「飲み屋街にガッツリ食べれる肉系の良い店はないか?」

「そうですね――」


 数件の店を紹介される。

 とにかく量を求めた『オルグの酒場』。

 一流シェフが作るステーキを提供する『バッフェングリート』。

 肉丼や肉定食を提供する『肉肉食堂』。

 などなど。

 実に迷う。どれも良さげだ。どうせしばらくは帝都に滞在するのだし適当に選んだところに行くか。

 などと店を選んでいた時、横を一人の青年(男か女かは判断できない)が通り過ぎる。


「今日はオルグの酒場だー! レッツゴー! あそこの肉の塊が一番――ん?」

「――ん?」


 いつもなら気にも留めない、はずなのに何かに惹かれてその青年の方を見る。

 相手も偶然こちらを向き、ばっちりと目が合う。


『クルシュ殿、俺はこの『オルグの酒場』がいいぞ――どうしたのだ、クルシュ殿?』


 ガリアが話しかけてくるが、私たちはしばらくの間見つめ合う。

 そして気がつけば同時に言を発していた。


「君が――」「お前が――」


「「――分霊か」」


 私と彼は自然と一歩を踏み出し、互いにギュッと抱きしめ合う。

 会ったことはない。なのにどこか懐かしさを感じる。まるで生き別れた兄弟の再会のようで。


 少しして同時に腕を解く。


「私はクルシュだ」

「ボクはシルヴィ」

「よろしくな」

「こちらこそ」


 互いに手を差し出し握手をする。

 こいつは私と同じ太陽神の分霊だ。絶対の自信を持って言える。

 まさかここで会えるなんてな。


ぐぅーーーーー


 シルヴィのお腹の音が響く。

 シルヴィは頬を赤らめ恥ずかしそうにする。


「と、とりあえずご飯食べない? まだでしょ?」

「ああ、そうだな。で、どこに行くんだ」

「ボクのおすすめの『オルグの酒場』だよ」

「じゃあ、そこに」


 シルヴィのおすすめの店に行くことにする。


「シルヴィ様、クルシュ様、行ってらっしゃいませ」


 私たちはホテルを出て『オルグの酒場』を目指した。




◯軽〜く紹介

シルヴィ

 容姿は十代後半から二十代前半あたり。今のところ性別不明。

 肩あたりで切り揃えられた空色の髪、透き通った青色の瞳。

 一人称はボク。

 太陽神の分霊の一つ。

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