43ロリ ロイヤルホテル


「着いたぞ! ここが、ロイヤルホテルだ!」

『すごいな、ここは!』


 私とガリアは言われた宿――と言うよりホテルを前にはしゃぐ。

 無理もない。外観は白を基調としており清潔感を感じる。客を迎え入れるエントランスは赤いカーペットが敷かれている。まさに国賓を迎え入れるのに適したホテルだ。

 私が帝都に滞在中はここに泊まれることができるとなればはしゃがない理由はない。


 私はガリアから降りてはやる気持ちを抑えエントランスへ向かう。ガリアも一緒に宿泊できるようなのでガリアも一緒だ。


 さすがは高級ホテル。警備からしっかりしている。エントランス前に二人の屈強な男が立っている。

 私はそこを通り抜ける。既に話はつけられているはずなので止められることはないはずなのだが不思議とドキドキする。

 二人の警備員が動く。

 なにを――っ。


「「どうぞ」」


 身長の低い私に気遣ってガラスの扉を開けてくれた。なんと優しい。私、感激っ。

 警備員の気遣いに感動しつつ私はエントランスの受付へ。


「こんにちは。クルシュ様ですね? 既にお話は聞いております。それでは早速お部屋を案内させていただきます」

「ああ、頼む」


 私は一人の爽やかな男のバトラーと顔立ちの整った清楚な女性のバトラーに案内される。


 私たちは階段を上り最上階の十六階へ。階段はさすが八階とあって長かったが、階段の途中に美術品などが置かれてありあっという間に上りきった。


「こちらの810号室がクルシュ様のお部屋になります」


 バトラーは鍵で部屋の扉を開ける。


「おぉ!」


 私は扉から広がる部屋に驚きの声をあげる。

 目の前の一面ガラス張りの窓からは最上階故に帝都の一部を眺望できる。

 左に目を通せば一人と一匹では有り余るほどの広さのリビング。大きなL字のソファは座り込んだら最後、立ち上がることはできないかもしれない。

 そして右に目を通せば屋敷にでもありそうなアイランドキッチン。表面はこれは大理石だろうか。白い天板が綺麗に光を反射している。


「そちらの食品庫や冷蔵庫にある食材等はご自由にご利用ください」

「ほぉ、自分で作れるのか」


 食品庫と冷蔵庫を除けばそこには豊富な食材が揃っていた。


「不足した食材等があれば私たちにお申し付けください」


 次に風呂場を見る。

 風呂場も流石だ。綺麗な石畳の床には傷や汚れが一つもない。そしてなんと言ってもその広さ。一人と一匹で十分に寛げる。なんなら泳げてしまう。


 次に大事な寝室だ。


「なんじゃこりゃ」


 私は呆然とした。天蓋のついたベッドがあるとこの部屋がまるで王の寝室かのように錯覚する。

 しかもベッドはとてもふかふかで良い睡眠を得られそうだ。


 一通り部屋を見て回った私とガリアはリビングに戻る。


「いかがでしたでしょうか?」

「最高だよ!」

「ありがとうございます」


 バトラーはいくつかの紙を私に渡す。


「こちらは注意事項や魔導具の使い方です」


 長々と書かれてある。


「そしてこちらが当ホテルで受けられるサービスです」

「ほぉ、こんなに」


 そこにはずらっとサービスが並んでいた。

 三食の用意やマッサージ、部屋の清掃、買い出しなどなど。

 そしてその横にはそのサービスの値段が書かれていた。


「おぉう、これは高い……」


 中々に高い値段設定となっていた。ここに泊まる者からすれば些細な金なのだろうが私にしてみれば全然高い。


「今回皇后陛下より最高のもてなしをと仰せ使っております。ですので全サービスが無料で受けられることができます」

「これを、全部か?」

「はい」

「私が一ヶ月泊まっても?」

「もちろんでございます」

「マジか……」

「マジでございます」

「あ、ちなみにこの部屋の宿泊料って……」


 つい気になったので聞いてみた。


「この部屋は当ホテルでも最上位の部屋となっております。ですので一泊金貨十枚ほどでございます」

「ははっ」


 笑うしかねぇよ。金貨十枚って……しかもそれが一ヶ月以上となると……よし考えないでおこう。いやぁ良かったぁ、全部無料で良かったぁ。


「何かございましたらこちらのベルをお鳴らしください。直ぐに私どもが駆けつけます」

「ああ、分かった」

「最上階にはクルシュ様ともう一方がご宿泊しております。はしゃぐのは程々に、と忠告させていただきます」

「おおそうだったのか」

「では私たちはこれにて失礼いたします」


 バトラー二人は一礼をして退室して行った。

 それにしてももう一人最上階に泊まってるのか。どんな金持ちなんだろうか。貴族? それとも他国の重鎮? 分からないがあまり拘らないでおこう。


 私は夕方までガリアと部屋を堪能するのだった。

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