1ロリ 二度目

 私は目を覚ます。

 辺りを見回すとあの大熊はいなかった。

 というか最初にいた場所に戻っていた。


 切られたはずの傷もなければ血も出ていない。血溜まりもできていない。

 なぜだ?


 私は確かにあいつに殺されたはずだ。

 実際に痛みを感じたし夢ではない。

 それなら……生き返った?

 なんで?


 それにただ生き返ったのなら元の場所には戻らないはずだ。

 それならと私は思考する。


 そして私はとある一つの仮説にたどり着く。


 ――死に戻り


 死に戻りをしたのなら殺されたはずの私が最初にいた場所で生き返っているのも頷ける。


 本当に死に戻りかどうか試してみたいが、もし生き返るのが一度だけなら洒落にならないのでやらない。

 私は思考をやめてその場を移動する。そして近くの茂みに身を隠して、出来るだけ先ほどの場所と距離を取る。


 おそらくもう少しで熊が現れるはずだ。

 一度でも遭遇したら私は死ぬだろう。


 私は鬱蒼と生い茂っている森の中を意味もなく進む。ただ先ほどの化け物から距離を取るために。

 それにしても木や草が鬱陶しい。私は体が小さいため余計にそう感じる。


 どれほど進んだだろうか。

 周りは木々に囲まれ行けども行けども森の中。人が通るような道はなく、生物がいる様子もない。ただどこかで鳴いている鳥の声と風で木の葉が揺れる音しかしない。

 不気味だ。


ガサガサッ

「ッッ!?」


 私はその姿も見ずに走り出す。

 姿を見てからでは遅いのだ。

 一度目に実感している。


 私は鬱陶しい木々を無視して走る。

 しかし――


ズドンッ

「ひっ」


 近くの木に何かが刺さる。

 その衝撃で木は粉々になり半ばから折れる。

 衝撃の原因を見れば一本のツノを生やしたウサギがいた。一見可愛いウサギだがドリルのような角と鋭い目つきが可愛さをなくしていた。


 私は、また別の方向へ駆け出す。

 真っ直ぐ走ってはロケットのように突進してくると思いジグザグに進む。


「はぁはぁはぁ……」


 しばらく走ったところで体力の限界からか息切れを起こす。よくここまで走ってこれたものだと感嘆するも、諦めるわけにはいかない。

 ある先生も言っていた『諦めたらそこで人生終了だ』と(そこまでは言っていない)。


 私は視界のひらけた場所に着く。

 もし空から見たならば、そこだけ森の中に穴が空いたようになっているだろう。


(しまった)


 私は悪態をつく。

 ここには障害物がない。

 早く走らなければ。そう思ったが――


「あぐっ……」


 ――ついに体力の限界が訪れ転んでしまう。足が悲鳴を上げている。酷使しすぎたせいだろう。

 そして立ち上げることができないまま時が進む。しかしどれだけ経ってもあのウサギが来ることはなかった。

 あいつの縄張りを抜けたのかもしれない。


 助かった、そう安心した時だった。


「あ…………」


 私は上空に大きな鳥を見つける。鷹のような鳥ではなくプテラノドンのような恐竜に近いものだった。

 私が気づいた時には奴は急降下しており、そして――


「がっ…………!?」


 私のお腹に奴の嘴が刺さる。

 プテラノドンはそのまま羽を休め、私を貪る。


「あぐっ、いっ……やっ……あ゛っ……」


 私は生きたまま内臓を食べられる。

 一度目の痛みとは比べものにならない痛みが継続的に私を襲う。声を上げるもどうすることもできない。奴はただ私の血肉を貪る。

 ぐちゅぐちゅと血肉の音を耳にして、私の意識が徐々に遠のいていく。


 奴と目が合う。

 奴は嘴をこちらに伸ばして頭を挟み――


「やめ……て…………」

ボキッ






 私は死んだ。





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