5ロリ 立ちはだかるゴ◯ラ

 『森の王』は不愉快だった。

 地面の下でゆっくり寝ていたのに魔物たちが騒ぎ出して、何かと思えば人間が現れたという。

 しかしただの脆弱な人間ではないらしい。どうやら魔物を喰らいとても強いという。


 面倒だ。

 しかしこの森の王として、あの方に認められた者として、邪魔者を排除しなければならない。森の秩序を乱すものは皆敵だ。


 王は百年ぶりに地上に顔を出して、噂の人間を見る。

 只者ではない。脆弱な人間と面構えが違う。目からは力強さを感じる。今までで初めての強者だ。

 直感がそう告げていたが王の実力には遠く届かない。


 王は邪魔者を排除するために動き出す。


 ◇◇◇


「キュアァァァァァァ!!!」

「ッッ!!」


 王が叫ぶ。

 ただそれだけで森の木々を震わせた。

 森に住んでいた魔物たちはすでに避難しているようで、多くの気配が遠ざかっていく。王なら死神を排除してくれるはずだ、魔物たちは王に信頼を寄せていた。


 王が叫んだ時クルシュは危機感を感じていた。

 今までの魔物とは比べ物にならない威圧感に殺気、そして絶対強者の如く余裕を感じ、一筋縄ではいかないと考える。

 決して油断していい敵ではない。


 よって彼女は身体強化を限界まで上げる。

 魔物を喰らって力を得て、そのさらに数倍の力になる。


(さっき日が沈んだんだがなぁ)


 チートな【天照之写身】が使えるのは日中である。今はついさっき日が沈んだところだ。

 なので【天照之写身】は最後の切り札として考えよう。

 魔物から得たスキルだけでは心許ない。だがこれでどうにかしなければならないので、今の持っているスキルで勝てる方法は……


 クルシュは考える。


 そして今のままでは力不足だと悟る。

 しかし今ある力でそうにかせねばならない。


(それなら今、成長してやる!)


 クルシュは強く意気込み、先手をと強く地面を踏みしめ王に接近する。

 そして思いっきり蹴りを入れる。


 しかしその巨体ゆえに痛痒も感じていないようだ。

 続け様に攻撃を加えていく。殴る蹴る、さらには魔法を使って。


 王はそれを人ごとのように眺めていた。

 少しこそばゆい程度にしか感じていない。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 クルシュはかなりの攻撃をしたのだがただ息を切らすだけで何の効果もなかった。


 ――火力が足りない。


 【天照之写身】があればなんとかなるものの王に効くとは限らない。


(逃げるか? いやそれは私のプライドが許さないっ。今ここでっ、強くなるっ!)


 クルシュは諦めずに攻撃をしていく。

 【不撓不屈】のスキルのおかげか心なしか攻撃の威力も上がっている気がした。

 しかし――


バシンッ

「ぐあ――ッッ!?」


 王はただ腕を振っただけ。

 それだけで小さなクルシュの体は吹き飛ぶ。

 腕や足の骨にヒビが入ったかもしれない。


 王とクルシュの力量差は圧倒的だった。


 クルシュは吹き飛ばされた先で考える。


(まだ足りない……)

(まだ強くなれる……)

(私はこいつを倒して生き残る……)


 生への執着を見せ、クルシュは立ち上がる。

 その時、とてつもない嫌な予感を感じて空中に逃げる。

 直後、先ほどまでいたところを火炎が放射され、木々が燃える盛る。

 一部の木は炭化している。


「……」


 私は呆然として声も出なかった。

 圧倒的すぎる。


「あ……」


 力量差に絶望していたクルシュは王の接近を許してしまい大きな手で叩かれる。

 かなり遠くまで飛ばされる。






 クルシュは森の王になす術もなく、死んだ。






◯お知らせ

 次回更新は4月11日です。

 これから2日に一回の更新となります。

 ごめんなさい。応援してくれたら頑張るかもしれません。

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