52ロリ 依頼完了
魔法で明るく照らされた地下をしばらく進み、鼠の数があり得ないほど増え出した。先ほどのような手の平サイズの普通の鼠から、人の頭ほどの大きさの突然変異した大鼠まで、徐々に私たちを襲う。
今はまだ地面や壁が見えているが住処にたどり着いたら地面も壁も鼠で覆われているだろう。
「近くに鼠以外の生体反応なし、よし薙ぎ払え」
「分かったよ! 燃え盛れ ここは火の海と化す! 火炎放射!」
下水が通る狭い地下道を火炎が埋め尽くす。
私は風の魔法で私とシルヴィの周りに壁を作り火を防ぐ。
あっという間に酸素がなくなり火が消える。酸素がないと困るので魔法で風を操り地下の空気を循環させる。
あれほどいた大小様々な鼠達だったがもはや炭すらも残っていない。たとえ焼けて死んでいなくとも酸欠で死に至るだろう。
ちなみにこの鼠達はただの生物だったり突然変異種なので魔石は残らない。なので依頼の成功は冒険者の言葉を信じるか職員が直接確認するかだが、
「うん、ばっちり」
ちょうど地面や壁、天井の汚れも燃えて幾分綺麗になった。一石二鳥だ。
「まだわずかに残っているはずだ。おそらくボスだろうな。それを倒したら終わりだ」
「よーし、さっさと終わらせてこんな場所から出よう!」
早く出たいのか足早に向かうシルヴィ。そして私も置いていかれないようにシルヴィを追う。
◇◇◇
「ここだな」
「だね」
私たちはようやく鼠らの住処だろう入り口にたどり着いた。地下道の壁に開けられた私一人が這って通れるほどの穴だ。
「ここ、やっぱ這わなきゃだめかな」
「土魔法があるだろ」
「あ、そっか。土魔法で道を作れば……」
シルヴィは壁に手を当て、石や土を操作し人一人分が通れる道を作る。
「よしそれじゃ、いよいよボス討伐だ」
「おー!」
私たちはいざボスを――
「あれ、いない?」
「もぬけの殻、だと?」
「逃げたのかな」
そう、住処であろうそこには鼠が一匹もいなかったのである。はてどういうことだろうか。
「クルシュ、もし、もしだよ?」
「なんだ?」
「もしボスが住処を出て私たちを迎え撃とうとして、火炎放射で焼け死んだら?」
「……あり得る、あり得るぞ」
しばらく熟考し、私は結論を出す。
「よし、ボスは行方不明。生きていたらまた討伐に来ればいい。こういういことにしよう」
「だね。てことはもう帰れるってこと?」
「ああさっさと帰ってシャワー浴びよう」
私たちはギルドへ帰るべく帰路につく。が、
「困った、迷ったぞ」
「どっちだっけ?」
とある分岐路に差し掛かったところでどちらから来たか忘れてしまった。
右だったか? それとも左か?
「こういうときはこれ!」
シルヴィは自らの杖を地面に立て、手を離す。
「クルシュ、右だよ!」
「お、おう」
この世界にもそれあるんだな。
迷っていても分からないのでとりあえず右に進んでみる。
……
……
……
……
……
「ははは、ダメだこりゃ」
「ボクたち、もう帰れないの?」
あれから長いこと歩いた。分岐点ではシルヴィの杖で行き先を決めたのが間違いだったか、完全に帰り道を失った。最初の分岐点にも戻れそうにない。
「場所は帝都なのは間違い無いだろうが生体感知を使ってもなにも――ん? これは……」
「どしたの?」
私はまた少し道を進み――
「なあちょっといいか?」
「ッッ!?」
――人を見つける。
その人は薄汚いローブを羽織っている。
「なっ、何か用かね!?」
ローブの人は慌てたように手に持っていた何かを私たちに見えないように背中に隠す。
私はそれを言及せず外へ通じる道を訪ねる。
「あ、ああっ、それならここを進んで右左右右真っ直ぐ右左左右左真っ直ぐ左に行けば外のマンホールに出る」
「右左右右真っ直ぐ右左左右左真っ直ぐ左、だな」
「ああ、間違えるなよ」
「分かった、ありがとう」
私たちはローブの人が言った通りに進む。
ローブの人はまた何かこそこそとしだした。
◇◇◇
「おぉー、外だー!」
「やっと出れた」
あれからまた長いこと進みようやく外の新鮮な空気を吸えた。
どうやらもう日暮れが近いようでオレンジ色の空が見える。
ここはどうやら路地裏のようで人の気配はしない。後は屋根伝いにギルドへ向かえばいいだろう。
いやその前にここで軽く洗っておこう。私は水魔法で体の汚れを落とし、風魔法で水滴を飛ばす。シルヴィも同じように汚れを落としギルドへ向かう。
「お疲れ様です。これにて依頼完了です。こちら報酬の金貨五枚です」
「ああ、ありがとう」
ギルドで依頼完了を報告した私たちは一旦ホテルに戻り、部屋のシャワーで体の汚れをくまなく落とし綺麗にする。
そしてガリアと合流し、腹を満たすため料理屋に赴く。
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