50ロリ 帝都の支部長

 工房に行った翌日。

 明日が剣の完成なので今日はギルドに行く。特にこれと言ってすることはないがいい依頼があれば受けよう。


 二日ぶりの冒険者ギルドだ。私とシルヴィ(ガリアは毎度の如く外で待っている)がギルドに入ると興味の視線が集まる。なにせ盗賊団を壊滅させたシルヴィと盗賊団の頭を討ち取った私だ。注目されない理由がない。


「あ、クルシュさーん!」

「なんだ?」

「おめでとうございます! この度クルシュ様の冒険者ランクが白金プラチナ等級に正式に昇格されましたよ!」

「おお、そうなのか!」


 この前対応してもらった受付嬢からランクの昇格を告げられる。


「冒険者カードの更新がございますのでお借りしてもよろしいでしょうか」

「ああ」


 受付嬢に金色のカードを渡す。


「それとクルシュさんとシルヴィさん、支部長がお呼びでした。こちらへどうぞ」


 私とシルヴィは受付嬢に案内され支部長室に入室する。

 支部長室には一人の女性が腰掛けていた。その女性は一言で言えば美女。全ての男が等しく魅了されそうな色気を放ち、目線は自然とその巨乳に吸い込まれてしまう。さらに胸元が開けた服はその胸を強調してこれでもかと男を集めてしまう。

 私もシルヴィも惹かれてしまっていた、がすぐに正気を取り戻す。


「初めまして、私が帝都の支部長をやっているフラン・ロールスイスよ。シルヴィちゃんは久しぶりね。クルシュちゃんは初めましてね、これからよろしくね」

「あ、ああよろしく」

「久しぶりフランさん」


 ちゃん付けされるが修正させる気にならない。


「とりあえずそこに寛いで」

「失礼する」


 私とシルヴィはソファに腰掛ける。


「さてまずはクルシュちゃん、白金プラチナ等級への昇格おめでとう」

「ああ、ありがとう」

「本当はね? 有り得ないのよ? 白金プラチナ等級がこんな連続して現れるなんて」


 まあそりゃそうだろう。

 聞けば白金プラチナ等級は英雄や勇者などの偉大な功績を残した者に与えられるという。だが、今回勇者や英雄などではない私たちが白金プラチナ等級へと至ったのは、ゴールド等級の冒険者とは明らかに突出した実力を持ち合わせているからであり、ゴールド等級以上の等級が白金プラチナ等級しかなかったというだけだ。もしゴールド等級より高く、白金プラチナ等級より低い等級があったならそれになっていただろう。

 無いなら作ればいい、とは思ったがそうするとなると、世界中のギルドに認知させなければならないという面倒がある。それならば、とイレギュラーではあるが既存の等級に分けたほうが楽だそうだ。


「というわけでシルヴィちゃんはもう一回は出てるけど、クルシュちゃんとシルヴィちゃんにはギルド総本部会議に出てもらうわ」

「ギルド総本部会議?」


 聞いたことのない会議だが名前から大体察する。


「ギルド総本部会議っていうのは年に一度、世界中のギルドに関することを話し合う会議ね。議題の内容は様々よ。魔物の発生状況に異常はなかったかの報告だとか、魔王が変なことをしていないかとか、去年はシルヴィちゃんのことも話したから今年はクルシュちゃんのことについても話すかもね」


 中々重要そうな会議だ。私が出席して話についていけるだろうか。


「誰が参加してるんだ?」

「主に各国の首都の支部長ね。後はギルド総本部総長、ぐらいかしら? 全員で二十二人ね。そこにシルヴィちゃんとクルシュちゃんを加えて二十四人になるわ」

「多いな……で、その会議はどこでいつやるんだ?」

「場所は毎年変わるのよ。去年はここ帝国の帝城の一室を借りたわ。大事な会議だからちゃんとしたところでやってるの。今年は隣の国クロイシュ皇国よ。たぶん皇城でやるんじゃないかしら? それで時期は二ヶ月後。クルシュちゃんのこともあるから時期が数ヶ月早まったのよ」

「そうだったのか」


 私が白金プラチナ等級に昇格したことはそれほど一大事らしい。


「あなた達はまだ帝国に止まるのかしら?」

「ああ、一応そのつもりだ。だがその会議があるならもう皇国に行ってもいいかもしれん」

「……」


 支部長は少し思案して口を開く。


「よければでいいのだけれど、私と一緒に出発しない? そっちのほうが楽だと思うの。私は馬車で行くし、豪華な馬車よ? それに本音を言うとあなた達がいたら護衛の分の費用が浮くわ」

「本音はわざわざ言わなくても良かったが……そういうことなら同行しよう」

「ボクも賛成だよ」

「ありがとう」

「それなら出発までは帝都でゆっくりと――」

「――実は二人にお願いがあるの」

「な、なんだ?」


 支部長は真剣な眼差しになり身を前に傾ける。胸の谷間が目に写ってしまいつい声が上擦ってしまう。


「三週間後、帝都で武闘祭が行われるの」

「「武闘祭?」」


 シルヴィとハモる。


「ええ、武闘祭は毎年行われていて、世界中から武闘家が集まって優勝を決める祭りよ。世の武闘家はこの祭りのために日々修行していると言っても過言ではないわ」


 それほどの大規模な祭りがあるとは初めて知った。


「ていうかシルヴィは知らなかったのかよ」

「ボクはたぶんその後に来たから初耳だよ」

「それでその武闘祭でお願いって?」

「ええ、あなた達には特別ゲストとして出てほしいの」

「特別ゲスト、か」

「特別ゲストって何すればいいの?」


 シルヴィが問う。

 やる内容によっては辞退もあり得る。


「観戦よ」

「観戦……それだけ?」

「いえ、それだけじゃないわ。一位から五位までの人とあなた達二人で戦ってほしいの。最後のショーとしてね」


 なるほど。それは面白そうだ。一位から五位ということは戦いを勝ち進んだ猛者だろう。戦い甲斐がある。


「私は受けてもいいが、シルヴィは?」

「やる!」

「ありがとう。祭りの詳細はまた後日知らせるわ」


 支部長からの用事はそれで終わりらしく、少し談話をして茶菓子を堪能し、支部長室を後にする。

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