48ロリ ソルジュとシルヴィは馬が合わない?
悶々としたままあまり寝付けずにいたため少々寝不足の私は、ホテルで豪華な朝食をとりエントランスでシルヴィを待っていた。
待っている間、私は寝ているソルジュを叩き起こす。
「おいソルジュ、ソルジュっ」
『……』
「起きろー、今日新しい剣買うんだぞ」
『はい、起きました!』
ソルジュが起きる。心なしか剣が薄く光り出した、気がする。
「久しぶりだな」
『そうですね。ところでここは?』
「ここは帝都にあるロイヤルホテルだ。これからソルジュの剣を探す」
『ほぅ、もう帝都に』
ソルジュと会話しているとシルヴィがやってきた。
「おーい! クルシュちゃーん!」
「ちゃんはやめろ、ちゃんは」
ちゃん付けはやめてほしい。例えるならあれだ、高校生にもなったのに親戚に◯◯くんと呼ばれるやつだ。ちなみに実体験である。
「ん? その剣、なんか光ってるよ?」
「起きたからな」
『初めまして』
「うわっ、喋ったよ!?」
「聞こえるのか?」
コクコクと頷くシルヴィ。
『クルシュさん、もしかしてこの人も分霊なのですか?』
「そうだな、互いに自己紹介としよう」
まずはシルヴィからだ。
「ボクはシルヴィ。太陽神の分霊の一つだよ」
次にソルジュ。
『私はソルジュです。月の神の分霊の一つです』
自己紹介、終了!
「へぇソルジュちゃんって月の神の分霊なんだ〜」
『ちゃん付けはやめてください。私、今年で十九なんですから』
「ボクは二十だよ。だからボクのことお姉ちゃんって呼んでくれても――」
『は? 嫌ですけど?』
ソルジュ軽くキレてねぇか?
「もぉ、そんなこといってぇ、可愛いなぁソルちゃん」
シルヴィはえいえいと剣を突っつく。
『イッラァ』
イラァって言っちゃってるよ、ソルジュ。キレてんじゃん。
「ほら、そこらへんにしとけシルヴィ」
シルヴィをソルジュから離らかす。
「蚊帳の外にされて寂しかったの? クルシュちゃ――」
「疾っ」
「――危なっ!?」
イラッとしたので剣を横に薙いだがシルヴィはブリッジの態勢で躱す。しかし完全には避けきれず数本の髪がはらはらと落ちる。
「危ないよクルシュちゃ――危っ」
「ちゃんはやめろと言っているだろう」
『そーだそーだ!』
「むぅ、分かったよクルシュ、ソルジュ」
「『それでいい(のです)』」
がうっ
「ん?」
服の裾をぐいぐいと引っ張られる。みるとガリアが手で引っ張っていた。
『周りの目がある。剣を振るうのはよせ』
「すまん」
そうだった、まだホテルのエントランスだった。
「じゃあ武器屋に行こうか」
「あ、そういえばそうだったね」
『早く行きましょう』
ようやく二人と一匹と一人で武器屋へ向かう。
◇◇◇
「ここら辺は武器屋とか防具屋とか魔導具屋とかの工房とお店が集まる場所だよ。何か道具が必要だったらここにくればほとんどの物が揃うよ」
ホテルから十数分程歩き、シルヴィがそう説明する。確かに冒険者が多く見かけられるようになったし煙突から煙が出ているところもある。
「今日行く武器屋は剣を専門に扱っているところで国宝級の名匠ジシス・イルヴァハーンの『イルヴァハーン工房』。超一流の戦闘家が常連のすごい工房だよ。噂なんだけどここ帝国の皇帝もそこの剣を愛用しているらしいよ」
「ほぉそれは凄いな。だが私たちみたいな冒険者なりたてでもいいのか?」
「いいと思うよ? なったばっかでも強ければいけると思う。うん行けるよクルシュなら」
「もしかして行ったとこないのか?」
「当たり前だよ! 私は魔法が得意だからね魔導具屋しか行ったことないよ!」
「いやそこ誇るなよ」
困った。そういうところは一見さんお断りな場所が多い。そして突っぱねられるのがテンプレだ。
「ていうか大分路地裏に来たんだがその工房はどこなんだ?」
シルヴィに案内されるまま歩いていくと大通りから離れ路地裏に来ていた。人通りは皆無で薄暗い。
もしかして迷ったとかじゃないだろうな。
「ここだよ!」
「ここかよ」
ちょうど着いたようだった。
店構えは老舗の雰囲気を感じさせる。工房の名が書かれた看板には少しツタが巻きついており手入れをしていないことがわかる。外壁にもツタが伸び始めている。まるで廃虚のような店構えだった。
それでも窓から溢れる光がここが今でもやっている店だと証明する。
とりあえず入店するとしよう。
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