46ロリ 賢者の弟子を名乗る分霊

 とある村の村娘として生まれたシルヴィは幸せだった。食べ物に困るほど貧乏ではなく、裕福ができるほどお金持ちな家ではなかったが親に可愛がられてすくすくと育った。また、近所の子供たちともよく外で遊び、夜はよく寝て、成長していった(胸以外)。そして十五歳、憧れの冒険者になることを目指して街へ出る。

 しかしその道中で盗賊に襲われ廃鉱山のアジトに連れて行かれた。そこで待っていたのは地獄の日々――の筈だったのだろうが連れてこられたその翌日、一人の襲撃者が現れる。それは一人の老人だった。ただ迷い込んだだけかと思ったが違った。瞬く間に盗賊たちを蹂躙したのだ。その老人はかつて“賢者”と呼ばれた凄腕の魔法使いだった。今ではすでに現役ではない身の筈だが、現役の頃とは変わらぬ魔法の技術で盗賊を壊滅させた。

 助けられたシルヴィはしばらく賢者の元で過ごし、賢者の弟子となり、魔法を学び五年。二十歳になった今年、例の月の魔女が襲ってきたという。師匠の賢者とともにそれを撃退し、分霊を探し出すために街に出てきて冒険者になったという。

 そこからは私の知っている通り、初依頼でアルバル盗賊団を壊滅させた、と。


「ね? クルシュちゃんに比べればボクなんて全然大したことないよ」

「いやいやいやいや。お前、賢者の弟子かよ十分すげえよ」


 全然大したことだった。

 なんだよ賢者の弟子って。通りで強いわけだ。


「それで、これからパーティー組んで一緒に分霊でも探すか?」

「もちろんだよ! ボクは魔法が得意なんだけどクルシュちゃんは?」

「私は魔法もまあ使えるが接近戦のほうが得意だな」

「ボクたちバランス良いんだね!」


 やはり賢者の弟子か、魔法が得意らしい。パーティーを組んで活動するときは私が前衛、シルヴィが後衛でいいだろう。


「そうだ、お前には話しておこうか」

「なにが?」

「これのことだ」


 ゴトっと私は机の空いているところに刃折れの剣を置く。


「この剣自体はまあただの一級品の剣なんだが、これには月の神の分霊が取り憑いている」

「えぇ!?」

「さっき言った月の魔女と戦ってる時にな私の使ってた剣に取り憑いたんだよ。魔女を倒すために手を貸します、ってな」

「ほぇ〜」


 シルヴィは興味深そうに剣の隅々を観察する。


「で、今は力の温存のために眠っている状態だ。どうやら刃折れの剣だと長く意識を保ちづらいそうでな、明日武器屋に行こうと思ってたんだ。良いところ知ってるか?」

「うん! なにせボクの方が長く帝都に滞在してるからね! お姉ちゃんに任せて!」


 無い胸を張るシルヴィ。

 しかし店選びはシルヴィに頼るとしよう。


「じゃ、話はここら辺にして、まずは料理を楽しむか」

「だねだね!」


 私はあと少しとなった肉を見つめる。


「あ、そうだクルシュちゃん! ここ、食後のデザートも美味しいんだよ」

「なぁにぃ? それは、しっかり味合わないとな」


 デザートという言葉に釣られる。メニュー表を見ればそこには確かにパフェ、アイスクリームなどの文字が。


「よーし! 腹膨れるまで食べるぞー!」

「おぉー!」


 私とシルヴィとガリアは心ゆくまでこの店の料理を堪能することにしよう。

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