59ロリ 武闘祭―予選第四試合、第五試合
遅れました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いやぁ凄かったな、さっきの」
「うん、もう作戦勝ちだよね」
私とシルヴィは先ほどの試合を思い返して感心していた。気配遮断のようなスキルを駆使して相手の認識外から攻撃、上手くスキルを使えていた。
そしてソフィアはと言えばぐぬぬと苦悶していた。
「どうしたんだ?」
「あの方と戦ったら私負けそうだな、と思っただけですわ」
「あぁ」
ソフィアは本戦からの出場になるが最初から彼女と戦うことがあるかも知れないのだ。そうなれば勝敗は怪しくなるだろう。
しかし今回は百人の選手がいたからこそできたことでもあるのだ。一対一となると勝敗はまた変わってくるだろう。
さて、司会の言葉によって第四グループが闘技場に上がる。今の所は目立ったものはいない。
『それでは、第四試合開始ーーー!!』
ゴーーーーーーーーーンッッ!!
第四試合が始まる。
選手らは各々の武器を握り近くの相手と相対する。そして剣を打ち合い、魔法を撃ち合い戦う。
――地味だ。
観客らは皆、そう思っただろう。私も思った。
これと言って強い人はおらず選手らの実力は拮抗している。だからこそ戦いは地味なものになっている。
というかこれが普通なのだろう。第一試合や第二、第三試合がおかしいのであってこれが普通、なはずだ。大男もいなければ強い武闘家もいない、気配を消せるエルフもいない。去年も、その前の年もこのような戦いは多かっただろう。観客らも知っているはずだ。
しかし、先ほどの試合と比べると面白さがない、華がない。
観客らは特に声を上げることなく静かに観戦していた。
可哀想にと思いつつ私は第四試合を見守った。
そして――
『試合終了ーーー!! 第四試合は四人が本戦に出場です!』
――何事もなく第四試合は終わりを告げる。
続けて本日最後の第五試合が始まる。
第五試合は第四試合よりかは幾分面白みがあった。
遠距離を保ちたい魔法使いと近距離になりたい戦士の過激な争いが起こったり(それに巻き込まれる者多数)、大柄な肉体でいかにも強そうな雰囲気を出して何人も寄せ付けず立っているだけの大男や(攻撃をしようとする者もいたが大男に睨まれてやめていた)、並の戦士を弾き飛ばす武闘家の女性がいたりと面白かった。
さらに強いわけではないのだろうが突然「きえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」と叫び出して奇怪な行動(ブリッジの体勢で闘技場内をめちゃくちゃに走り回ったりなど)を行い、皆んなを引かせ寄せ付けていない変人もいた。尚それに引いて場外になった者も数名いる模様。ちょっとしたホラーである。ソフィアはもはや見ていなかった。オルグ坊は従者に目を隠され見せないようにされていた。ついには観客らからブーイングを頂戴する。だがそれすらも変人は「イェアアアアアアァァァァッァァァッァァァッァァァッァ!!」と高らかに手を掲げ返答する。やっぱり変人だ!
それを見てシルヴィは笑っていた。何がツボに入ったのかは知らん。
そして――なぜかライバルから友になった魔法使いと戦士、威圧だけの大男、武闘家の女性、奇行の変人が勝ち上がった。
奇行の変人が本戦でどんな戦いを見せるのか非常に楽しみである。
『それでは以上を持ちまして、予選会一日目のプログラムを終了いたします!』
こうして予選会一日目が終了し、観客らは思い思いに席を立ち帰っていく。しかし中にはそのまま広場で飲み食いをする者もいるだろう。
一方私たちは少しばかりその場に残っていた。
「で、クルシュとシルヴィは明日からどうするのだ」
「うーん、そうだな……まあホテルでゆっくりするか鍛錬でもしようか」
「ボクはクルシュとデートしたい!」
「はぁ?」
「ね、いいでしょ?」
「まあ特に断る理由もないからいいが」
「やったー! ということでボクたちは適当にしてるよ」
「そうか」
それは明日からのことについてである。明日も明後日も予選会は続く。しかし私たちはそれら全てを見るわけではない。見るのは今日見たものだけだ。なので本戦が始まるまで私たちは適当に暇を潰さなければならない。
なぜなら予選会は前戯である。故にこれといった見所も滅多にない。なので本番である本戦から観戦するのだ。
「そういえばガリアはどうする?」
「俺か? 俺は特にはすることはないが……クルシュ殿と一緒におるのも、なぁ」
ガリアはそう言ってシルヴィを見やる。もしかして私ちょシルヴィがデートするとなって遠慮しているのだろうか。
「ならガリア殿はうちに来い。色々と雑談も交わしたいからな」
「でしたら私も参加させてもらいましょうかね」
ガリアはアッガースとメルヘヴンと共に暇をつぶすようだ。仲がいいのだろうか。
ソフィアはどうするのか、と私はソフィアを見る。
「
真面目な奴だ。
まあ各々の予定は決まった。今日はこれで解散だ。
それにしてもデートか。変なことをしてくれないといいのだが。というか女の子とデートなんて初めてなんだが。私がリードすればいいのか? いや私にそんなことはできない。しかし男として……そうだった、私今は女の子だった。しかも幼女だった。なら何の問題もないじゃん。よしリードされよう。
シルヴィも元からその気だったのか「まずはあそこに行ってぇ、その後にあそこら辺かなぁ」と呟いている。
うんこれなら何の問題も…………って女の子らしい服ねぇじゃん。
私は服をどうしようか一人悩むのだった。
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