20ロリ 世界に仇なすは月の魔女 中編

 私は傷だらけの体を無理に動かしてリリの元へ向かう。

 急がなければリリ達がっ。


 爆音が聞こえる。

 衝撃波が森を駆ける。


 そしてやっとの思いでリリ達の元へ着いた。

 しかし――


「あら遅かったわね。今終わるところよ」


 ――リリ達は身体中から血を流して倒れていた。


「リリっ! アルテナっ!」


 声をかけても返事がない。

 そしてミーズは、リリの頭に剣を突き刺す。同時にアルテナを魔法で斬り刻む。


「貴様あああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

「さて最後にあなたね」

「……ぐ……がはっ」


 また目の前に来ていたミーズが水之剣で、私の腹を突き刺す。

 私は手を前に出し奴に魔法を放つも、奴は剣を抜き退がって回避する。


「貴さm……ぐふっ!?」


 すでに剣は抜かれたはずだが刺された腹から激痛が走る。


「あらやっぱりそうなるのね」

「どういう、ことだ……ぐっ」

「月と日ってね、相性が悪いのよ。だから月の神の分霊で日の神の分霊である貴方を攻撃したら大ダメージになるのよ。まあ逆も言えるけど」


 なるほど道理で刺された以上の激痛が走るわけだ。

 これはやばいな。今は真夜中。【天照之写身】は使えない。むしろあいつの方が有利。

 リリとアルテナは殺された。だがあいつらは神樹で、精霊なので体が死んだだけかもしれない。しかし大変な状況に変わりはない。


 私は痛む体に鞭を打ち奴へ近づく。

 手に魔力を纏わせ手刀をしようとしても剣で防がれる。

 奴が手刀に目をやっている隙に自らの剣で奴の腹を裂く。


「遅いわね」


 しかしそれすらも防がれてしまう。

 しかもカウンターをくらう。


「がはっ」

「はぁ、もう少し強いと思っていたのだけれど、意外と弱かったのね」


 私は四つん這いになって血を吐く。

 全身には切れ傷を作り、穴も開いているところもある。私はもはや倒れてもおかしくない怪我を負っていた。

 もしこの状態で【天照之写身】を使おうものなら、確実に自らの体にとどめを指すことになるし、そもそも今は夜。太陽は出ていないため日中より負担が大きい。

 しかしやるしかない!


「あら? あらあらあら?」


 私から魔力が吹き出す。血も吹き出す。

 力が滾る。激痛が走る。

 私はゆらりと立ち上がる。血が滴る。

 私は奴を睨む。奴は面白そうに笑う。


 私は消えたかのように駆ける。奴も同時に駆け、剣戟を繰り広げる。

 あまりの速さと衝突により火花が散る。


 奴の剣は分霊の一つ。もはや神器と言っても差し支えない。

 一方、私の剣は名匠が作ったものだが奴の剣に比べれば遥かに劣る。それをなんとか日属性を付与したり魔力を纏わせることで壊れるのを防いでいるが、すでに小さなヒビが入っている。


 奴の顔から先ほどまでの面白がっていた様子が消え、真剣な表情になっている。


 そして私は絶好の機会を見極め、奴の剣を上へ払う。

 奴の剣は手から離れないものの上へ大きく振りかぶるようになってしまっている。奴はしまったという顔をする。

 ガラ空きとなった胴を剣で薙ぐ。


「ぐぅっ」

『ああああああぁぁぁぁぁっっ!』


 奴は後ろへ後ずさる。

 奴の腹から血が流れる。やはり日と月の相性は悪いようだ。

 それにしても奴の腹から悲痛な声が聞こえた。もしかするとソルジュとやらの悲鳴かもしれない。


 奴になんとか一太刀を与えられた。

 しかしそれでも奴は私と同じように自動治癒系のスキルでもあるのか、すぐに治ってしまう。


 さてこれからどうするか。

 私の【天照之写身】はもうそろそろ消えそうだ。しかも体が悲鳴を上げている。

 やばいな、そう思った時だった。


『私を使ってください』

「何?」


 ヒビが入り今にも砕けてしまいそうな自らの剣から若い女性の声が聞こえた。

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