12ロリ 修行

 さて獣王のガリアが私の部下になった。

 そしてそれから二週間経った今、私はリリ、ガリアと共に特訓をしていた。


 今まではリリの無数の樹の枝が私を襲っていたが、ガリアも加わったことにより一対二となった。

 リリとの特訓でさえ大変でかすり傷もしばしばあったのだが、そこにガリアも加わるとなると特訓の大変さは苛烈極まる。ガリア個人の戦闘力は私よりも下だ。しかしリリとの連携で来られると厄介だ。


 攻撃を防ぎきれず骨が折れたり鮮血が吹き出したりがしばしば。

 だが傷を癒す【自動再生】のおかげでその程度の怪我ならすぐに治った。


 そして毎日戦闘訓練をして疲れ果てたり、そんな私に無慈悲にも「早くご飯」とリリが催促したり、ろくに動けない私をこれ幸いにとリリに襲われたりと、疲労困憊の日々を過ごす。


 そして――


「はぁっ」

「ふっ、よっ、はっと」

「もっといくのー」


 ――二人の猛攻を凌ぎカウンターを与えられるまでに成長した。


 無数の枝が行き交い、その隙間を縫うように動いて私に一撃を与えて離脱するヒットアンドアウェイを繰り返す筋肉質な男。

 少し離れた位置から仁王立ちをして観戦しているように見えるが、その実無数の枝を操作している神樹のリリ。


 私はその二人を相手に互角の力だった。さすがにリリが本気をだしたらすぐに負けるからほんのちょっとの実力しか出していないとはいえ、ガリアと特訓を始めた頃よりは大分強くなっている。


「はぁっ!」


 一撃を当ててきたガリアにカウンターを入れ遠くまで吹き飛ばす。

 そしてリリの操っている枝を燃やして灰に変える。


「よしっ、今日は終わりっ」

「クルシュー」

「おっと」


 終わった途端リリが駆けてきて抱きついてくる。


「クルシュ、前に比べて相当強くなったの。よしよし、なのー」


 リリはそう言って頭を撫でてくる。


「お疲れ様です。少し休憩してから魔法の特訓にしましょう」

「ああ」


 読んでいた本を片付けたアルテナが寄ってきて、りんごジュースを渡す。

 それをいっきに飲み干す。

 美味い。


 この世界にきてはや三ヶ月ほどだろうか。

 死に戻りを幾度と経験している私からすれば四ヶ月ほど。

 あっという間だ。

 幼女に転生して、殺されて、地獄を知って、復讐をして、リリたちと出会って、強くなった。

 とても濃い三ヶ月だ。

 まさか三ヶ月前の自分は三ヶ月後に異世界の森にいるとは思いもしなかっただろう。

 人生何があるか分からない。


「リリはとっても強くなったの人類最強かもなの。あ人類じゃなかったの」

「おい」


 最強と言われて少し嬉しい。が最後のは余計だ。

 しかし誰でも憧れるだろう、世界最強というものは。


「でも自惚れちゃダメなの。世界は広いの。クルシュと渡り合える相手がいるかもしれないの。だから力を不用意に見せびらかさないの。そして力に溺れちゃダメなの」

「ああ、分かってるさ」

「そうだ世界は広い」


 今戻ってきたガリアもそう言う。


「例えば見るからにか弱そうな幼女が森の王だったりとかな。まあ種族的に強いのは竜人族や魔人族だな。精霊も強いが個体による」

「そんなに強いのか?」


 最初に言っていたことは無視して問う。


「ああ、竜人はいつもは人の身だが竜化もできる。竜化はまさしく竜になる。力も魔法も最高レベルだ。特に竜魔法だな。竜特有の魔法なんだが弱くても中級魔法ほどの威力だ」


 竜魔法とは竜のみが扱えるもので、例えばブレスがそうだ。一応龍麟と咆哮も竜魔法の一部なので私も二つは使えると言うことになる。

 そしてその竜魔法が中級魔法と同じ威力。それなら当然、竜魔法の高威力は想像以上の威力だろう。

 アルテナ曰く、最高威力のブレスで山脈を消し飛ばせるほどだそうだ。

 そんなことができるのは竜王しかいないらしいが、リリは私なら勝てると言っているが勝てる気がしない。


「魔人族は魔法適性が高い。その魔法は竜魔法にも匹敵する」


 かなり適性があるようだ。山脈ほどではないにしろ山は消し飛ばせるほどの威力程だろうか。

 私もやろうと思えば山を一つ消し飛ばせる。

 が、その頂天に立つ魔王は私の実力を優に超えるであろう。

 世界は広い。


「あ、そういえばそれすらも強いのが神龍なの。神龍は竜人じゃないの、魔物なの。でも大昔から生きていて知能も高いの」

「大昔ってどれぐらいだ」

「我より数百歳ほど年下なの」

「マジかよ……」


 大昔っていう次元じゃなかった。大昔というからいっても数千年かと思ったら数万年は超えてた。


「リリ様は大地の女神が、神龍は天空の神が生みました。大地の女神は天空の神と仲が悪くよく喧嘩していました。昔に神樹でであるリリ様を大地の女神が生んだのですが、それに対抗するように天空の神も魔物の竜を作りまして。その第一子が神龍です」

「ちょっと待て。神龍、リリより数百歳年下って言ったよな。数百年して生んだのか?」

「そうなの。地上に新しい生物を作るのは大変なの」


 まあそれもそうか。その当時は龍という概念すらなかっただろう。そう考えると納得できるような気がする。


「だから、神龍はいっつも我にちょっかいをかけてくるの」


 やんちゃ坊主か。


「数千年前にも神龍が暴れて大陸が削れたの」

「えっ……」

「それが俺の国の北西部にあるところだな」


 大陸を削った?

 ブレスでか?

 マジかよ。


「それならそいつが世界最強なのか?」

「そうなの。だから奴を倒せば世界最強の座を貰えるの」

「いや無理だろ。大陸削るような奴とまともに戦えねぇぞ」

「いけるの」

「いやいやいや」


 リリがかなりの無茶振りを言う。


「それで神龍ってのはどんな姿なんだ」

「う〜んとね、いつもは宇宙にいるんだけど、前来た時はこの森を覆うほどの巨体で白く輝いてたの」

「それって……あんなのか?」


 私は上空を指差す。

 そこには白い巨体がゆっくりとこちらに向かってきていた。


「そうそう、あんなのなの……」

「「「「…………え?」」」」

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