13ロリ 神龍襲来
「そうそう、あんなのなの……」
「「「「…………え?」」」」
私たちは目を見張る。
「ちっ」
リリは舌打ちをして無数の枝を出現させ神龍の動きを止めようとする。出した枝の数は私と特訓をしていた時と比ではなく、二倍三倍以上多かった。
すると神龍は口に魔力を溜めブレスを放つ。
樹の枝がブレスによって燃えていく。しかし神樹の名は伊達ではなく壁の如き枝がそれを防ぐ。
その一瞬の内にアルテナは結界を張る。
「守護せよ、聖八芒結界」
八芒星の結界がブレスの入射角と四十五度ずらして出現し、枝の壁を焼き払ってもなお進むブレスを反射する。
少ししてブレスが霧散する。
神龍は空を飛んだままこちらを見据える。
鋭い眼光が私を貫く。奴は神龍というだけあって全身は白い鱗に覆われて神々しく、ガジーラなどとは比べ物にならないプレッシャーを放っている。
なるほど奴が世界最強に相応しいのかもしれない。
大事を考えて私は森に住む魔物たちに避難するよう念話で伝える。
「クハハッ、お前が新しい六王であるか」
威厳のある声が響く。
「で、何の用できたの」
リリは面倒そうな顔をして聞く。
「そこの新しい六王が強そうだったのでな。手合わせをしようと思ったのだ!」
「却下なの。さっさと帰るの」
リリは即答する。
これほどリリが不機嫌さを顔をに出すのは珍しい。それほど神龍のことが嫌いなのだろう。
「断るのだ! さあ新たな六王の森の王よ、さっそく我と死合をしようではないか!」
神龍はリリの拒否を拒否して、私に話しかける。
試合のニュアンスが違った気がしたが気のせいだろうか。
「いやだよ」
私も面倒なので断る。
「ほらクルシュもそう言ってるの。早く帰ってなの、早く!」
リリはさっさと帰るよう急かす。
「よし! では殺ろうか!」
「あれ、言葉通じてない」
「はぁ、昔からそうなの」
神龍に言葉は通じないらしい。
神龍は既に戦闘態勢に入っておりやる気満々だ。
「はぁ、あいつがこうなったら要求を飲むまで帰らないの。超面倒なの」
「じゃああいつと戦えばいいのか?」
「うん、そうなの。……でもちょっと不安なの」
リリは不安そうに私を見やる。私ならいけると言っていたがそれでも万が一を考えると不安なようだ。
「ま、大丈夫だろ。手合わせなんだろ?」
「でもあいつの場合は死ぬか重傷までが手合わせなの」
「よしやめよう」
私は即断する。
「どうした! さっさと殺るぞ!」
神龍が早く始めたいのかウズウズしている。
「一つ条件だ」
「なんだ?」
私は神龍に一つの条件を提案する。
神龍は話を聞いてくれるようだ。
「相手を殺さないこと。これを守るなら手合わせしてやってもいい」
「うむ分かったぞ! では――!」
約束を守るかは怪しいが、一先ずは守ってくれそうだ。
私は足に力を入れ宙に跳ぶ。
リリは家を地中に埋め、私が心置きなく暴れまわってもいいようにしてくれた。
魔物たちも既に遠くに避難したらしくここから数百メートルの範囲にはいない。
私は空中で神龍と睨み合う。
そして――
「――始めようぞ!」
神龍と私は同時に動き出す。
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