11ロリ モフモフパラダイス

 獣王が部下(?)になった。ちなみに敬語はやめさせた。一応獣王は私の部下だ。しかし六王だと獣王が先輩だ。なので相殺という形で親しくしている。


 だが獣王が部下になったのはいいが、なんかむさ苦しい。今までは幼女と保護者で微笑ましかったのだが、今では筋肉が存在を主張して一気にむさ苦しくなった。


 そのことをガリアに言うと――


「それなら獣化でもするか?」

「獣化?」

「ああ。獣人族は自分の種族に変身できてな、猫人族なら猫に、虎人族なら虎になれる」

「へー、お前はできるの?」

「ああ、もちろんだ。こんな感じに……」


 ガリアはそう言って獣化をする。

 黒く闇のような体毛、二つの尻尾、鋭い牙と爪。

 ガリアは大狼へと変身した。


「俺は狼人族でな。どうだ?」

「……」

「クルシュ殿?」


 私はウズウズしていた。

 目の前にあるのはフサッフサのモフッモフの狼である。誰でも触りたくなるのではないだろうか。

 たとえ元があの筋肉の塊で合っても、今はモフモフである。触らざるを得ない。

 私はガリアに飛びつく。


 そしてモフる。

 ワシャワシャ、モフモフ、ワシャワシャ、モフモフ、ワシャワシャ、モフモフ。


 ガリアは私の勢いに負け横向けに倒れ、私にされるがままだ。

 私はモフモフを堪能する。


 十分に堪能しガリアの上で私は仰向けになる。

 青い空、心地よい風、モフモフな毛。

 それらを一度に感じ幸せな気分だ。


 私は心地よさに負け、うつらうつらとし、眠りにつく。


 ◇◇◇


 目を覚ます。

 寝るつもりはなかったのだがつい眠ってしまっていたようだ。


 そばにはリリもモフモフベッドで眠っており、ガリアも横たわったまま眠っていた。アルテナは近くに椅子を作り座って読書をしていた。


「あら起きましたか、クルシュさん」

「ああ。で、それは何の本だ? あと誰からもらった?」

「たまにですが六王がここに来られるんです。その際に老王から人間の娯楽品をもらっているんです。暇なので。これは魔法書ですよ」


 老王からもらっているということはこの服もそうか。

 私はこの機会にと毎回毎回疑問に思っていたことを聞く。


「毎回思うんだがどこから取り出してんの?」

「異空間収納という魔法です」


 チート魔法かよ。


「魔法か……私でも使えるか?」

「ええ、まあ覚えれば」

「なら教えてくれ」


 私はそう言って、リリを起こさないように立ち上がり、アルテナの側に寄る。

 そしてアルテナに教えを乞う。


 今までの魔法とは違ってややこしかったが魔法陣や仕組みを覚えれば簡単だ。

 この魔法は魔法陣で異空間と繋げる。つまりは魔法陣が扉のような役割をしている。

 ちなみに異空間というのは、簡単に言うとこの世界に存在する何もない空間だそうだ。

 難しい話になるがこの世界には無数の空間があるという。物質世界のような目に見えて確認できる世界や、精神世界のような目に見えない世界、魔法世界のような存在はしているが一部の人にしか見えない世界など存在し、それ以外に使われていない無の空間が存在する。その空間を自分専用のものにするのがこの異空間収納だ。

 使えるものは世界でもごく一部で、魔法の存在すら知らない人が多いらしい。


 そんなこんなで魔法を習得しているとリリが目を覚まし、ついでにガリアも目を覚ます。


「異空間収納か」

「ガリアもできるのか?」

「当たり前だ」


 やはり六王ともなればできて当然らしい。


 私は獣王とも意見を交わして知識を得ていく。


「てか獣王なんだろ? 国に戻らなくていいのか?」

「ああ、俺は一応コーザック獣帝国の王だが、別にいいだろ。優秀な部下もいるしな」

「信用してんのか」

「ああ。いつも面倒ごと任せてるからな」

「おい」


 その部下が可哀想だ。


「たまには手伝ってやれよ」

「そうは言ってもなぁ、政治はさっぱりなんだよ」

「なんで王になった!?」


 政治のできない王など意味はあるのだろうか。いやない。それではただの国のシンボル、あるいは看板だ。


「獣帝国は強き者が上に立つ」

「実力主義、か」


 獣帝国は実力主義だそうだ。

 力の強いものが上に立つ。そして国を導く。確かに理にかなっている。弱い者が上にいても意味がない。


「まあ俺は獣帝国では最強だからな。俺の言うことが正しい。そうだ、今度うちの国に寄った時に招待しよう」

「じゃあ期待してるぞ」

「ああ!」


 なるほど森を出たら世界を旅してみるのもいいかもしれない。

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