3ロリ 目覚め

 私は湖の側で目を覚ます。

 もう一度辺りを見回す。何度見ても湖の側だ。


(あれ、私力尽きて死んだ?)


 そんな疑問が浮かぶ。

 しかし今までに得たスキルを持っているので死んではいなかった。


 私は奴との戦いに勝った。

 私は生き残ったのだ。


 私はその事実に歓喜する。

 私は変わってしまった。だけどそれでいい。


 私は奴を喰らうために上空から奴を探す。

 すぐに見つかった。

 森の中にポツンと開いた穴のような空白地帯。木々は焼き焦げ、中心に行けば行くほど灰になっている。

 その中心に奴は横たわっていた。


 奴に近づく。

 あたりは焦げ臭い。

 今落ち着いて見るとかなりの激闘を繰り広げたと思う。そしてよく私は生き残れたと感嘆する。


 私は奴を喰らう。

 ちょうどいいぐらいに焼けていた。

 必死に勝利を得た証からか今までの魔物よりも美味しかった。

 ちなみに大熊は普通の肉、蜘蛛は食えたもんじゃない、プテラノドンは肉が少ないがまあまあ美味しい、炎の鷹は鶏のようだった。


 美味しく食べていると激痛が私を襲う。

 全身を刺すような痛み。今までに受けたどんな痛みよりも痛い。

 そして体が進化していく。


 痛みが引く。

 今までは同じレベルの魔物を喰っていたからか痛みはなかったがこいつはかなりの強者だったのだろう。


 腹がいっぱいにまで食べる。だがこの小さな体には全部入るわけがない。いくら大食いでもこの量は無理だ。

 どこかで落ち着けたらまた食べるとしよう。

 私はこいつを冷凍保存する。魔法は便利だと改めて感じる。


 さてここに止まっていても仕方がないので神樹に向かうとしよう。

 私が眠りにつく前、森の王がどうとか神樹からどうとか言っていた気がするので神樹に行けば何かわかるかもしれない。


 私は空を飛び方向を確認し、歩いて神樹へ向かう。

 たまにはこうしてゆったりと行くのも良いかもしれない。


 ◇◇◇


「はぁー、飽きた」


 私は深いため息と悪態をつく。

 なぜなら木ばっかで景色が変わらない。しかも身長が低いから木が邪魔。魔物たちも私を恐れてか気配すら感じない。

 さらに神樹が遠すぎるのか、はたまた私の一歩が小さいのか知らないが今日中にたどり着く気がしない。


(うん、諦めよう)


 私は嫌と言うほど木を感じたので空を飛んでいくとしよう。そうしよう。


 ◇◇◇


 音速飛行――スキルのレベルも上がっており音速飛行が可能となっていた――で十分ほど飛び、ようやく神樹にたどり着いた。


 神樹を見上げる。

 天高くまで伸び、学校一つは入りそうな太い幹に圧巻される。

 神樹の側、数百メートルには木は生えていない。木が神樹を避けているようだった。


 私は神樹に近づく。

 特に何も起こらないと思っていたが――


「初めましてクルシュさん」

「ッッ!?」


 突然目の前にメイド服に身を包んだ女の人が現れる。

 綺麗なサラサラとした緑色の髪は森の木々のようで、透き通った青い瞳は空のように綺麗だった。

 彼女は頭を下げて挨拶をする。


「驚かせてすみません。改めて初めまして、私は神樹様の守護をしているアルテナです」

「その守護者が私に何のようだ」


 私は守護者を警戒して身構える。


「あなたにお伝えしたいことがありますので、こちらにどうぞお掛けになってください」


 彼女はそう言って木を操作したのか、地中から木の枝が生えて椅子と机を模す。


「あ、その前に服と靴をどうぞ」

「あ、ああ、ありがとう」


 そういえば私はボロボロな布しか着ておらず戦闘によって更にボロボロになっておりほぼ裸の状態、さらには裸足だった。

 私は彼女から綺麗な服と靴――誰からもらったかは知らない――を貰ってささっと着替える。下着はない。


 着替え終わった私は椅子に腰掛ける。


 そして彼女の話に耳を傾ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る