4ロリ 守護者の話

「まず、あなたは森の王ガジーラを討伐したことにより神樹様があなたを新たな森の王と認められ、六王の一人となりました」

「森の王?」

「はい。森の王とはここら一帯の神樹様を中心とした森の王のことです」

「そのまんまじゃねーか」

「森の王がすることは特にありませんが、例えば森に棲まう魔物たちの命を脅かす存在が現れた時に排除しなければいけません」


 それなら私を襲ってきたのは奴が森の王(名をガジーラというらしく、ゴ◯ラと似ている)だったから?


「今回森の王があなたを襲ったのもそのためです」

「それなら、私はお前らの敵か?」


 私は殺気を放つ。

 しかし彼女は柳に風と受け流す。かなりの実力者だとわかる。


「いえ、森の王が倒されたのならそれだけの力しかなかったということです」

「中々酷いんだな」

「神樹様と森の安全、六王の在席が一番重要ですから」


 そして、と彼女は話を続ける。


「あなたはその実力を神樹様に認められ森の王となりました」

「辞退することは?」

「できません。ガジーラはこの森でも圧倒的な強者でした。その分、彼の変わりがいませんでしたので」

「そうか……」

「もちろんこの森を離れても構いません。森の王がする仕事なんて滅多にありませんから」

「それで、さっきから言ってる六王ってのは?」

「六王とは森の王、竜王、獣王、魔王、精霊王、老王の六人のことで、世界の統率を行います」

「統率?」

「森の王は魔物、主に神樹周辺の魔物を、竜王は竜人族を、獣王は獣人族を、魔王は魔族を、精霊王は精霊族を、老王は人族を率います」

「各種族の代表みたいなものか?」

「はい。世界が危機に瀕したときにのみ動いてくだされば結構です。そしてその六王のトップは神樹様ですのでお忘れなく」

「そうだったのか」


 神樹はかなりすごい木だったようだ。


「私からの話は以上です」


 彼女はそう言っていつのまにか作り出した木のコップにジュースのようなものを注いだ。


「りんごジュースです。飲みます?」

「ああ」


 今まで水しか飲んでいなかったのでもらっておこう。

 美味い。


「いくつか聞いて良いか?」

「ええ、どうぞ」

「まず、お前は何者なんだ?」

「神樹様の守護者ですが……」

「人間じゃないだろ」

「……」

「自惚れるつもりはないが私の殺気を受けてもなんとも思っていなかった。それに気配が曖昧だ。人間のようだが植物のような気配もする」

「さすがです。私は神樹様によって生み出された精霊のようなものです」


 精霊……か。


「精霊族とは違うのか?」

「正確には違います。そういえばあなたも人間の子供にしては大人な雰囲気もありますが……」

「ああ、それは私が前世に死んでこの体に転生したからだ」

「転生……」

「ああ、私の前世は普通の男の学生だったが、突然目眩に襲われたと思えば湖の側でこの姿だったんだ。十中八九転生だな」

「転生は聞いてことはありましたけど本当にあったとは……」

「それで次の質問だ。ここはどこだ?」

「はい、ここは神樹様がいらっしゃる森で、この世界の人間からは魔物の強さから『世界最恐の森』と呼ばれています。そしてこの森はラー大陸のアルタイル帝国、クロイシュ皇国、フロイゼン王国の三つの国の国境を跨がっておりどこの国も不可侵を決めています」


 ふむ、これからどうするか。

 森の王になったならそうそう死ぬような敵は現れないだろう。世界最恐の森の王だ。世界を見ても私と戦えるものの数は限られるはずだ。

 私は生き残ることができた。だからこの後は私をこの世界に転生させた奴を殺す。


「そうだ。私をこの世界に転生させた奴に心当たりとかあるか?」

「すみません。世界の情報には少々疎いもので、帝国や皇国に行けば目星はつくかもしれませんが私は……」

「そうか」


 それなら最終的には私をこの世界に転生させて死に戻りをつけた奴を殺す。そのためにまずは人のいるところにいかなければならない。

 別に急ぐこともない。ここでしばらく暮らすのも良いかもしれない。


「なあここで暮らして良いか?」

「ええ、もちろんです」


 あっさりと許可ももらったことだ。

 しばらくはここで体と心を落ち着かせてスローライフを送ろう。

 地球にいたころから異世界スローライフもしたいと思っていたんだ。もちろん無双もしたいが。


 まずは拠点作りから取り掛かろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る