41ロリ 主人公+ギルド=テンプレ展開

 私とガリアは城を後にしてギルドへ向かっていた。

 団長はこれから盗賊団の処理があるそうで城で別れた。その際、私は団長からギルドと宿の場所を聞いた。


「この通りにあるはずなんだが……っとここか」


 私はギルドの看板がかけられた八階建ての一際大きな建物を見つけ、ギルドだと確信する。

 またガリアは外で待ってもらい、私は扉に手をかける。


(城に向かうときにしっかり顔は見られているはずだ。だから私に絡む奴はいない、はず!)


 私は少しドキドキしながら扉を開ける。


「おぉ」


 私は感嘆をもらす。それは思っていたよりも綺麗だったからだ。

 飲んだくれがいたりして荒れているのではと思っていたが、ギルド内は隅々まで掃除されてある。新人だろう若い人たちがいる。そんな彼らに冒険者のノウハウを教えているベテラン冒険者がいる。多くの冒険者に依頼を受理させている受付嬢がいる。

 荒くれの“あ”の字も感じない素晴らしいギルド――


「おいおい、ここはガキが来る場所じゃねぇぞ、あぁ?」

(なんでやねん)


 ――だと思っていたのだが、厳つい顔の男が出てきた。しかも鋭い目で睨みつけてくる。


(なんだ? もしかして私がギルドに行ったら絡まれる法則でもあるのか?)


 しかしただ絡んできたわけはないようで――


「バッカッ! もっと優しく言いなさいって言ってるでしょ!」

「痛って!?」


 女冒険者に叩かれる男冒険者。


「もっと優しく! ニコッと! 笑って!」

「こ、こうか?」


 女冒険手に言われ男はニッと笑う。


「違うわよ! こうよ! こう! それじゃ盗賊の嫌な笑みと一緒よ!」

「うぅ」


 女冒険者が手本を見せるも男の怪しさは消えない。


「なんなんだいったい……」


 私は突如始まった不思議な出来事に少し呆然とする。

 本当になんなんだ。絡まれたと思えば、女冒険者に叩かれて、笑顔の練習を始めた。意味が分からん。

 私がそんな事態に飲み込めないでいると一人の爽やかなイケメンが話しかけてくる。


「ごめんよ、いつもあんな感じで。ところで君はどうしてここに? ここは冒険者ギルドなんだ。もしかして迷子かな? 迷子なら俺が家まで送り届けてあげるよ」

「……」


 私を迷子だと勘違いしている男に言葉が出ない。

 言葉が出ない私を『知らない人が出てきて言葉に詰まっている』と勘違いでもしたのかイケメンは自己紹介を始めた。


「俺はゾルド。シルバー等級の冒険者だ。あっちの二人は俺と同じパーティーの――」

シルバー等級のアメッサよ」

シルバー等級の、ガリバーだ」

「――だ。君の名前は?」


 私は名前を問われる。

 気づけば他の冒険者もこちらに注目している。「おいガリバーの奴、またやってるぞ」「いっつも新顔にやっててなー」「いい奴なのに顔が、なぁ」とちらほらと聞こえる。

 ふむ、あの厳つい顔の男は私に絡んできたというより私を心配をしての行動なのだろう。ただ顔が厳ついだけなのだろう。


ゴールド等級のクルシュだ」


 私は鞄から金色に輝くギルドカードを取り出し自己紹介する。


「……え」


 誰が漏らした声か。小さな声のはずなのにやけに大きく聞こえたのは何も場がシンと静まり返っただけではないだろう。

 少ししてようやく理解が追いついたのか一同驚きの声をあげた。


「「「「えええぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっぇぇええっっっ!!??」」」」


 またこうなったか、とテンプレ展開に私は息をつく。

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