64ロリ 時計台
「そろそろ時計台に行こっか」
広場の屋台をあらかた見てまわりいよいよ時計台に登ることにした。時計台の中は誰でも見学することができ順番制だが展望台にも登れるらしい。
私とシルヴィは扉を開け中に入る。中には数人ほど人がいる。展望台を目指しているのであろう、壁に沿って続く螺旋階段を登っていく。上を見上げれば長い螺旋階段が続いているのが見えた。これを今から登るのは面倒そうだがまあ展望力見える景色が良いとシルヴィが言うのだから登る価値はあるだろう。
私たちは他の客に続いて階段を登っていく。
「九十八……九十九……百……」
「あと少しだね」
百段まで数えたところで再度上を見上げる。あと数メートルだ。
「……百十五……百十六……百十七……百十八……百十九……百二十!」
私は最後の階段を踏みしめ全てを登り切る。
長かった。
木製の扉を開けそこからは帝都の景色が――
カチ……コチ……ガコン……
――広がってはおらず機械式時計の裏側を見ただけだった。看板を見るとこのまま先に進んでくださいとある。この先の扉を開いたら展望台なのだろう。また看板には『機械には触るな』と注意書きがされている。そして看板の隅には『頼むから触らないでくれ』と書かれている。おそらくどこかのバカが機械に触って壊して技術者が苦労して修理したのだろう。文字からその時の気持ちがヒシヒシと伝わる。
この世界においては最高水準の機械式時計はすごいの一言だった。精密で精巧な機械の部品一つ一つが互いの部品を動かし全てを動かす。これを作った職人の人に尊敬を抱く。
時計を見るのも良い加減にして早速展望台に向かう。展望台に続く扉を開けると、帝都の街並みが一望できた。
ここら辺に時計台より高い建物はなく遠くまで見渡せる。圧巻の一言だった。
下を見れば先ほどの広場が。上から見ると屋台と人が隙間なく入り混じっているのがよくわかる。
ガコン、と時計の長針が動く。
「クルシュ、私たち女の子同士だよ」
「ん? あぁそうだな」
シルヴィが突然おかしなことを言い出す。しかも真剣な表情で。
「でも女の子同士でも良いと思うの。だからボク、クルシュの気持ちに応えるよ」
「は? 何を言っているんだ?」
私の何の気持ちに応えるんだ?
全くわからん。
「恋人同士でするお姫様抱っこをされたし、それに『割れ貝』もくれたし……それって、私と付き合いたいってことでしょっ!?」
「……全く違うんだが!?」
恋人同士でするお姫様抱っこで何だ、どんな関係でもするときはするだろ。割れ貝は友達としてあげたし。まさかシルヴィの勘違い?
「なんで!?」
「たったそんだけで付き合いって、ないだろ」
「そんなことってっ、お姫様抱っこはキスと同じくらい大事なものなんだよ!?」
「何それ初耳」
何それ初耳なんだが、地球と文化が違うのか?
「ボクの初めては好きな人と決めてたのに……まあでもクルシュならいい、よ?」
「え、いや、その、すまん」
シルヴィの勘違いでもなくただの文化の違いだったとは。これは責任を取ったほうがいい、のか?
「…………まあ、クルシュにその気がなかったら別に気にしなくていいから」
「え、おい……」
「そろそろ戻ろ。他の人もいるし」
シルヴィは気にした様子はなく私の手を引っ張って時計台を降りる。
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