2章 アルタイル帝国編
24ロリ 道中
お待たせいたしました。2章が始まりました。
『帝国と皇国編』です。
今までのあらすじ。
異世界の森の中に転生した幼女クルシュ。異世界転生に希望を抱いていたが魔物に喰われ殺され地獄を知る。ついには闇堕ちし復讐へ。はたして森の王となり世界最強となる。
だが月の魔女に襲われ、彼女に対抗するため分霊を探す旅に出る。
それではどうぞっ
◇◇◇
クルシュが森を旅立った十数年前。
クルシュのクラスメイトらもまたこの世界に転生していた。ある者は大商人の娘として、ある者は一国の皇子として、ある者は田舎の息子として、世界中の様々な家に生まれた。
そして皆が状況を理解でないまま突然始まった新たな人生を歩むことになった。
それから十数年が経ち成人し、自立を始めた頃「クラスメイトに会いたい」と皆が思った。たとえ十数年経とうが忘れられない日本での生活、忘れられない友の顔。
日本に帰れずともせめて友と再会を果たすために、ある者は商人として、ある者は冒険者として世界を旅しクラスメイトを探した。広い世界の中からクラスメイトを探すのは大変だ。どうやって探すのかが一番の問題であった。
そんな彼らが途方に暮れていた時、とある国より世界中に日本語で書かれたビラが出回った。そこには「クラスメイト達よ、もし今一度皆で集まりたいならクロイシュ皇国皇城へ集まれ。私はそこで待っている」と書かれていた。
ほとんどの者が急いでその場所へ集まり、クラスメイトらと再会した。その数三十六人。教室にいたのが教師含め四十一人であったため五人が集まっていないこととなる。
しかし再会できたことは嬉しく数時間も雑談に花を咲かせていた。
さて彼らは全員ではないものの再会することができた。
これからはどうするか?
迷っていたところ、皆をここに呼んだ皇国の皇子に転生した元クラス副代表が一つ提案をした。
「皇国を拠点にして活動したら?」
なるほど確かにそれなら再び集まることも容易にできるし、副代表が皇子なので何かと融通が効くかもしれない。
クラスメイト達は二つ返事で了承し、皇国の首都を拠点に冒険者活動や商売を始める。そこは当然皇国の首都であるために大都市となっている。商人にとっては絶好の商売の都市であるし、近くにはダンジョンもあり冒険者も多く集まる。
クラスメイト達はほとんどが、商業に関してはプロな大商人の娘率いる商業一派か、パーティーを組み協力して冒険者稼業をしている冒険者一派に分かれた。他は皇城で皇子の補佐として働いた。
中には世界を見たいと旅に出た者もいるが年に一回は集まると約束したので放置だ。
こうして彼らは皇国の中でも有名な冒険者パーティーや商人となって成功を収めている。
そんな彼らにクルシュが出会うのはそう遠くない未来だ。
◇◇◇
もうここ数日景色が変わらない。どこを見ても木か草か魔物。魔物は襲ってきてもリリに「魔物はなるべく殺しちゃメッ」と言われているので宥めて森へ返している。
そんな飽き飽きとした平原のど真ん中をゆっくり歩いているのは私クルシュとガリアである。ソルジュは刃折れの剣に取り憑いていているが刃折れだと活動しづらいようで反応はここしばらくない。早く剣を買ってやらねばならない。
私たちは今現在森を出て近くの街に向かっている途中である。そこで良い剣があれば買うとしよう。だが私の力に耐えられる物でないとまたすぐに壊れてしまうので買うのはまだ先になるかもしれない。
私は獣化状態のガリアの背中に横になり寛いでいる。
ガリアは散歩気分で楽しそうに歩いている。
私は森を出た最初の頃は始めて見る異世界にわくわくしていた。しかし結果はこれである。平原のど真ん中で何もない。あるのは最初に言った通り木と草と魔物だけだ。
まあこんなだだっ広い平原も異世界らしいといえば異世界らしいが、もっとこう、魔物に襲われる商隊だったり、もっと街でも村でもあってもいいと思うのだが。
「なぁーんで何もないんだ」
「それはここが森に近いからでは?」
「……あ、あぁー、そういえばそうだったな」
私はすっかり忘れていたがあの森は『世界最恐の森』と恐れられる場所である。だから危険のある森から比較的近いところは、たとえ住みやすそうな平原が広がっていても人が一切住んでいないのだろう。
納得である。
「近くの街まであとどれくらいだ?」
「ふむ、近くの街だと……そうだなこのまま行って明後日には着くはずだ」
「二日後か……長い。景色にも飽きたし明日に着くぐらいの速さで走ってくれ」
「了解した」
すると景色が先ほどよりも断然速く流れる。風が頬を撫で、まるでバイクに乗っているようだ。乗ったことないけど。
私はモフモフを堪能しつつ今日で幾度目か分からない仮眠をとる。
「――殿、――シュ殿、――ルシュ殿、クルシュ殿っ」
「うぁ?」
「夜も近い。ここらで野営にしよう」
「ああ、そうだな」
かなり眠っていたようで空は綺麗な夕焼け空となり、太陽と反対の空から徐々に暗くなっている。
私とガリアは慣れた手つきで異空間収納から野営道具を取り出し、食事の準備を始める。
魔法を使って点火し、魔法で鍋に水を張りついさっき点火した火にかける。そしてフライパンもだして同時に調理を進める。
料理をしていく内に辺りはすっかり暗くなり、今調理に使っている焚火だけが唯一の光源だ。一応魔法で明るくすることはできるが雰囲気を出すために敢えてしていない。それに平原の中で焚火だけが唯一の明かり、空には無限ともいえる星々。これはロマンだ。
星空は地球と割りかし似ているようで天の河も綺麗に見える。
そうこうしている内に夕食が出来上がりガリアと食べる。
今日は肉のステーキとスープだけの簡易なものだが、ガリアは美味しそうに食べる。
「そういえば街には冒険者ギルドがあるんだろ?」
「モグモグ……ああ、そうだ……モグモグ……小さな村でない限りどの街にも……モグモグ……ギルドはある」
「やっぱり冒険者になった方がいいよな」
「ああ……モグモグ……」
「飲み込んでからでいいぞ?」
モグモグが会話の途中に入って聞き取りづらい。ガリアはごくんと肉を飲み込み水を飲む。
「ふぅ、げぷっ……ああ、冒険者になっておいて損はない。街に入るのにも金は必要だが冒険者だと割引になる。他にも宿が割引になったり、冒険に必要な道具も割引になる」
「中々便利なんだな」
私の手元には多少のお金はある。
これはアルテナから貰ったのだが元はといえば老王から貰ったものらしい。服といい本といい、老王には本当に感謝している。リリやアルテナが使うようにと渡したのだろうがほとんど私が使っている。少し申し訳ないのでもし会うことがあればしっかりと感謝しよう。
「それで街に入る時はガリアは私の従魔っていうことでいいんだな?」
「ああ。その方が楽だ」
従魔だといっておけば変な詮索はされないだろう。別に隠すほどのものではないが、ガリアは獣王だ。一応一国の王である。そんな王が私といると何かと詮索されたり目立ったりしてしまうので隠すことにした次第である。
そして雑談をしつつ食事を終え、早速眠りにつく。
私はガリアのそばに寄って、ガリアに体を預ける。ガリアは私を覆うように丸まる。
寝袋の完成だ。
これが中々暖かい。ふわふわモフモフに包まれ私としては天国にいるような気分だ。
満天の星空の下、私は静かに眠りにつく。
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