25ロリ 街に着く

 翌日の昼頃、私とガリアは街に着いた。

 街は十メートルはあるだろう壁に覆われており魔物の襲撃を防ぐようにして立っている。

 『世界最恐の森』へと行く者はいないが魔物の襲撃に備えているのか立派な門が聳え立っている。だが今まで襲撃されたことがないのか新品のように綺麗だ。


 私たちはゆっくりと門に近づいていく。すると門番も私たちに気付いたのか声を上げる。声が小さくだが聞こえる。


「おい! 人が来たぞ!」

「なに!? そっちはあの森だぞ!?」

「でも来てます!」

「誰だ!」

「小さい女の子と……大っきな狼です」

「何ぃ〜?」


 そうだよなー。そうなるよなー。知ってる。

 そりゃ最恐の森のあるこっちから来たら驚くよな。しかも幼女と大狼だし。訳わからんよな。

 門を少し開け門番数人が外に出てくる。


「止まれ!」


 私たちが門の目の前まで来たとき門番の一人が叫ぶ。


「お嬢ちゃんたちは何者だ?」

「私はクルシュ。こっちは従魔だ」

「そうか……なぜ森方面から来た?」

「色々とあってな」

「……そうか」


 誤魔化してみたが門番は訝しんでいるが詮索はしないようだ。


「クルシュちゃんの親御さんはいるか?」

「クルシュちゃん……こほんっ、まず勘違いしているようだから言っておくが私は子供じゃない。今年で十七はいっている」

「なに?」


 この世界では十五歳から成人らしい。ので私は十分成人の部類に入る。精神で考えればだ。体は知らん。

 幼女だと思っていたらすでに成人だったことに驚いている門番たち。


「それと親はいない」

「「「……」」」


 野暮なことを聞いたなと門番たちは黙りこくってしまう。

 少ししてようやく口を開く。


「こほんっ、何のようでここに来たんだ?」

「ああ、そろそろ人里に降りようと思ってな」

「……」


 親を亡くしどこかの森でこの狼に育てられ、ようやく人里に行く決心をして今に至る――とでも思っているのだろうか、門番達は。

 雰囲気が少々重くなる。


「少し、待っててくれ」

「ああ、分かった」


 そう言って門番は私から離れて会話し出した。おそらく私を街に入れるかどうか話し合っているのだろう。


 数分してようやく門番に門を通され、街に入る。


「ようこそバズビオンの街へ」


 どうやらこの街はバズビオンというらしい。

 門が開かれ街並みが視界に広がる。街はまさに異世界と言った中世ヨーロッパの街並みだった。ここらへんは住宅が多いのか住民が多く見られる。


「通行料はいくらだ?」

「通行料はいらん」


 通行料を払おうとしたら拒否られる。


「そうだ冒険者ギルドはどこだ?」

「ギルドはこの通りを真っ直ぐ行って左に行けば見えてくる」

「そうか、ありがとな」

「ああ、だがその容姿だと……まあ頑張れ」


 私は門番たちに礼を言い、ガリアに乗ったままギルドへ向かう。

 私が予想していた通り視線が集まる。子供たちは大狼に興味津々で近寄ろうとする。それを母親は危ないと言って抑える。

 そんな状況を抜け大通りに出る。ここを左だ。


 大通りに出るとそこは多くの住民以外の人が行き交っていた。装備を付けたいかにも冒険者な人、馬車を引いている商人らしき人。

 職種だけでなく人種も様々。人族が特に多く見られ他には、エルフらしき耳が長い者、ケモミミを付けた獣人。しかし人族が一番多くエルフや獣人は数えるほどしかいない。

 そしてそんな彼らからまたもや視線が集まる。二度見をしているものが多い。確かに大狼と幼女だ。私だって二度見するかもしれない。


 ちなみにガリアの獣化状態の高さは人の身長の二倍以上ある。足だけで人の身長ほどだ。歩いていればかなり目立つ。

 ついでにガリアだけでなく乗っている私も目立っている。


 視線が雨のように降り注ぐ中を進みギルドらしき建物を見つける。

 ギルドらしき建物は他の建物より高く五階建て。出入口には多くの冒険者らしき人たちが出入りしている。

 ここがギルドだろう。

 ガリアはギルド近くの道脇で立ち止まる。私はガリアの背から飛び降りる。

 ガリアの背にかけていた荷物を持つ。小物を入れるバッグ――異空間収納を知られるとまずいためバッグでごまかしている――と刃折れの剣だ。


「じゃあ私は行ってくるからガリアはここで待っててくれ」


 ガリアは従魔を演じているためガウッと吠える。野次馬たちがビクッとする。

 私はガリアの頭を撫でて人だかりを進む。


(私はモーセか)


 周りには野次馬が集まっていた。しかし私がギルドの入り口に向かうと自然と野次馬たちが私を避けていく。

 モーセの海割り伝説のように――あるいはとなりのト◯ロの猫バスを避ける木々のように――人が分かれて、私はギルドの扉の前に立つ。私が幼女だからか扉が大きく感じる。心なしか威圧感を感じる。


「さて……」


 私は勢いよくギルドの扉を開け放つ。

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