32ロリ 緊急依頼
バズビオンの街に来てから五日が経った。
一日目は冒険者登録をして、二日目はゴブリン退治をして、三日目は街中の些細な依頼――草むしりだとか、迷い猫探しだとか、下水道の清掃だとか――を引き受けたり、四日目は臨時で他の冒険者とパーティーを組んで盗賊が出たらしい場所に赴き調査したりした。盗賊は結局見つけられなかったが。
ギルドでは私を知らない冒険者はいないほどに有名になり、『クルシュちゃんに守られ隊』とか言う組織ができていた。守り隊ではない、守
皆私の実力はすでに知っている。『なんか知らんけどめちゃくちゃ強い』という認識だ。
誰も私の強さの秘密を知ろうとしないのだ。『可愛いからどうでもいっか〜』という呑気な奴らだ。
だがそんな彼らが好きだ。面白いし。
そんな彼らと別れるのは少し悲しいがそろそろ帝都に行くべきだろう。
私の今の目的は『太陽神の九つの分霊』を探すことだ。だからいつまでもここにいることはできない。
だから私は明日の朝、あの街を出発して帝都に向かう。
今日はあの街最後の依頼を受けている。ゴブリン退治だ。
どうも街から少し離れたところで二十体ほどのゴブリンが見つかったらしく私が出ることになった。
「ぐぎゃ!?」
「ぐぎゃぐぎゃぐぎゃっ」
「ぐぎゃぐぎゃー」
二十三体のゴブリンが
(弓五、棍棒十五、魔法一、剣一、リーダー一、か)
私は百メートルほど手前からゴブリンたちを確認する。
これぐらいならすぐに終わるだろう。
「じゃあガリア、3、2、1で行くぞ」
「了解だ」
「3……2……1っ!」
私とガリアは同時に駆け出す。
一瞬で百メートルは離れていたゴブリンたちに近づき、私は刃折れの剣で、ガリアは鋭い爪で、薙ぐ。
「ぐぎゃっ――!!」
「ぐっ!?」
「――!?」
ほとんどのゴブリンが私とガリアの攻撃によって死んだ。残りのリーダーや魔法を使うゴブリンも反応する前に即座に殺す。
「――ぎゃぁ」
「ふっ」
駆け出してからたったの五秒で全てが片付いた。
あっという間の戦闘、いや蹂躙だ。
「ふむ、やはりこの程度だとストレッチにもならんな」
「ああ、クルシュ殿が倒した百体の群れがちょうどいいストレッチだ」
他の冒険者が聞いたら卒倒するようなことを言う私とガリア。だがそれほどの戦力差があるのだ。
もし私があの街の冒険者と戦ったら何の疲労もなく勝つだろう。
私もガリアももう少し手強い相手を所望していた。
そんな時――
bbbbbbbbbbbbb
「おっ?」
――冒険者カードが振動する。
緊急依頼だ。
「なに? 街に盗賊団が襲撃? 至急冒険者は防衛に回れ……」
どうやらあの街に盗賊団が襲撃に来たらしい。そしてすぐに私個人宛に依頼がくる。
『街が盗賊団に襲撃されている。できるだけ早く街に戻ってきて欲しい。盗賊団の数は低く見積もって二百。冒険者も多くが負傷。救援求む』
非常に大変な状況だ。
私が不在の時に狙ったのかそれともただの偶然かは知らないが、奴ら盗賊団は私の好きな街を襲っている。
「ふっふっふっ」
私はあの街が好きだ。そんな街を襲撃されて私は黙っていない。
「ガリアすぐに行くぞ。最高速度だ」
「了解だ!」
私はささっとゴブリンたちの処理をして、ガリアに跨り街を目指す。
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