37ロリ いざ帝都へ!
職員との話も終え私は職員と共に外に出て、帝国兵と会った。
私たちが話をしている間に盗賊の移送準備が終わったようで各々が休憩をとっていた。
「団長、状況はどうだ」
職員が団長だという男に聞く。
「ん? おぉ、こっちは無事に終わったぞ」
「ならもう出れるのか?」
「もちろんだ。第三騎士団をなめるなよ」
ドヤ顔を決める団長さん。
「で、そっちは話終わったのか?」
「ええ、こちらは終わりました」
「よしなら出発だな」
「はい。あ、この方も乗せていきますね」
「ん?」
団長が職員の近くに居た私を見つける。
ジロジロと私を見つめる。足から始まり、腹、腕、顔へと上に上がる視線。
「信じられないかもしれませんがこの方は——」
「——盗賊団の頭を倒した、のか?」
職員の説明に重ねて事実を見破った団長。
「っ、分かるのですか?」
「ああ、見れば分かる。無駄のない動作、俺に対する警戒心、だがそれでも動揺しない心の強さ。それは子供のそれじゃない」
ふむ、いつも通りにしていたのだが無意識にしていたようだ。団長の言葉で初めて気づいた。
しかし私ですら無意識にしていたことを見抜く団長は只者ではないのだろう。
「で、一緒に乗るんだったか? 別にいいぞ。一人二人増えたところで変わらん」
「ありがとな」
「いいってことよ!」
私もついていくことになった。
「あの〜、団長。非常〜に言いづらいのですが……」
「なんだ?」
一人の団員が団長におずおずと話しかける。
「実は早く着くために団員を最低まで減らして馬車も減らしてですね、これ以上は乗れないんですよ」
「何? 詰めれば大丈夫だろ」
「詰めてそんな状況なんです。それに今回全員鎧着て来てますし。さすがに首と一緒には乗りたくないですし」
あちゃ〜と頭に手を当てる団長。
「どうにか出来んのか」
「鎧を脱いで行けばどうにか」
「さすがにそれは、なぁ……」
「私は別に大丈夫だぞ。おーい、ガリア!」
私はガリアを呼ぶ。
近くにいたのか直ぐに走ってやって来た。
「私はガリアに乗るから、乗せてもらわなくても結構だ」
「そうか」
団長や団員、職員が突如現れた大きな狼に驚く。団長こそ目を見開かせただけだが、団員に至っては剣に手をかけ今にも攻撃しそうだ。しかし団長はそれを手で制する。
私がガリアを撫で、ガリアも気持ち良さそうに私に身を預けたため安全だと分かり団員は構えを解く。
それでもガリアの威圧はなかなかなもので、団員はビクビクしている。
「じゃあ行こうか」
「あ、ああ」
私の掛け声に正気を取り戻した団長はまだ驚きながらも団員たちに声をかけて出発の準備を進める。
私も出発の準備を、と思ったが荷物はすでに異空間収納に入れてあるので特にない。強いて言えば別れである。
私は冒険者たちと会う。
「ボス、本当に行くんですか」
「ああ」
「ボス、いつか戻って来ますか」
「ああ……と言いたいが難しいかもな」
「「ボスぅ」」
寂しそうに、悲しそうなゲルドとグルド。元はただのチンピラだったのだが、変わったものだ。私がしたんだが。
他の冒険者も私がいなくなることに寂しさを感じているようだ。
「今まで楽しかったぞ、ありがとな。私がいなくなってもこの街を守れよ。くれぐれも私についてくるなよ。普通に邪魔だから」
私は最後に伝えたいことを伝える。
冒険者の中には涙ぐんでいるものもいる。そこまでか?
「クルシュさーん! 準備できました! 直ぐ行けますよー!」
「出発してくれ!」
職員の声が響く。
私は先に出発するよう声を上げる。
「じゃあな、皆んな。元気に暮らせよ」
私はガリアに跨り背を向ける。
後ろから冒険者たちの声が聞こえる。
「さようならー!」
「救ってくれてありがとー!」
「クルシュさんもお元気でー!」
「大好きだー!」
最後のやつ誰だ、おい。
そんな時、誰かが駆けてくる音がする。
「クルシュさん!」
「リーネ」
見ればよくお世話になった受付嬢のリーネだった。
ギルドから走って来たようで肩で息をしている。
「クルシュさん、今までありがとうございました」
「ありがとうと言いたいのはこちらの方だ。何も知らない私に色々と教えてくれたしな。ありがとう」
私はお世話になったリーネに礼を言う。
「クルシュさん」
「ああ」
「さようなら」
「ああ、さよならだ」
ガリアはゆっくりと駆け出す。
私はリーネに、冒険者たちに手を振る。リーネも冒険者たちも手を振り返す。
「ワオオオオオオオオオォォォォォォォォォンンッ!!」
ガリアの遠吠えが街に響き渡る。
私は帝国兵とギルド職員と共に帝都へ向かう。
帝都で分霊を見つけられることを願って。
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