28ロリ 初依頼 前編

 昨日は半日をチンピラの善良化に費やし翌日の今日、早速依頼を受けることにした。ちなみにチンピラの善良化は殺気を当てて怯えさせて「お前は心優しい冒険者だ」と言い続け洗脳。そうして半日も続けていれば私をボスと言い慕い、誰にでも心優しい善良な冒険者となった。

 これで皆んなが迷惑することはないだろう。よかったよかった。


 さて、お昼の少し前、私はギルドに来た。冒険者たちの注目を浴びる。すでにチンピラの善良化について聞き及んでいるようで「本当にあの女の子がやったのか?」と懐疑的な者や「あの子は何者なんだ」と正体を探っている者たちがいた。


 視線が集まりむず痒しさを少々感じながら依頼ボードの目の前までいく。

 依頼ボードに貼られている依頼を見る。


『ゴブリンの群れ討伐』

『オーク五体討伐』

『ブラックウルフ討伐』

『マリアネ草十束採取』


 などの依頼があった。

 私は『ゴブリンの群れ討伐』に注目した。駆け出し冒険者と言えばゴブリン退治であろう。私はまだ駆け出しの身。ここはテンプレ通りに『ゴブリンの群れ討伐』を選ぼう。

 ちなみにゴブリンも魔物だがリリからは倒しても構わないと許可を得ている。どうやらゴブリンは数が人間と同じくらいかそれ以上に数が多いらしく、むしろもっと減らしてくれと頼まれた。魔物の数を減らすのも私の仕事らしい。


 私はその依頼をピョンとジャンプしてボードから剥ぎ取る。

 それを持ってカウンターに向かう。


「これを、受けたいっ」


 私は背伸びしてカウンターに依頼の紙を置く。中々高い。


「あ、はい。依頼の受理ですね、畏まりました。冒険者カードをこちらに掲示してください」


 昨日と同じ受付嬢リーネだ。

 私は言われた通りに冒険者カードを魔道具に掲示する。

 するとカードは淡く光り、すぐに消える。


「これで依頼は受理されました。ゴブリンの群れ討伐ですか。こちらは詳しい数も分からず強さも未知数です。昨日チンピラを倒した貴方なら大丈夫かと思いますが万が一のこともあるので十分に気をつけてください」

「ああ、忠告ありがとう。討伐の証明はどうするんだ?」

「ゴブリンの場合ですと片耳を切り取って持ってきてください。魔物の討伐証明部位は依頼の紙に書かれていますので次からはそこをご確認ください」

「そうだったのか」

「あ、魔物には魔石というものがありまして、それを持ってきてそちらの換金所で換気できますよ。他にも毛皮や肉が換金できたりしますのでぜひご利用ください」


 カウンターの端には換金所があった。その近くの壁には換金できるものの表がある。


「では頑張ってください」

「ああ、行ってくるよ」


 私はギルドを後にして今回の依頼の場所へ向かう。冒険者たちからも「頑張ってこいよー!」だとか「いってらっしゃーい」と言われたので手を振って返す。

 場所はここから南に少し行ったところにある村だそうだ。歩いて一時間ほどの近い位置にあり、たまに冒険者が依頼に行っているらしい。


 私はガリアに跨り早歩きで向かってもらう。ガリアの早歩きは馬車ぐらい早いのですぐに着くだろう。


 数十分後、私とガリアは目的地の村に到着した。

 村は家屋が十軒ほど立っているだけで残りは畑だ。村の周りを木製の柵で覆われており、まさに異世界の村のイメージそのままだった。


 私とガリアは防御力があるとも思えない柵に空いている村の出入り口を通り中に入る。


「おーい! 依頼に来たぞー!」


 私は誰も来ないので大声を上げる。

 すると一人の老人が小走りにやってくる。


「お待ちしておりました冒険者様……って化け物!?」


 老人はやって来るや否やガリアに目がいき驚く。


「安心しろ、こいつは私の従魔だ」

「そうでしたか……って幼女!?」


 今度は私に目がいき先ほどとは別の意味で驚く。

 まあ屈強な男が来ると思ったら幼女だものな。


「私は強いから心配するな」

「は、はぁ……まあギルドで依頼を受けているので大丈夫です、かな」


 ギルドが幼女に依頼を、ましてや冒険者登録などさせるはずないと判断して私を一人の冒険者として扱う。

 老人は依頼書を確認して私を歓迎する。


「改めて儂はこの村の村長をやっているものじゃ」

「私はクルシュだ。こっちはガリア」

「よろしくお願いしますクルシュ様、ガリア様」

「ああ。それでゴブリンの群れの討伐だったか?」

「はい。ここで話すのも何です。儂の家に向かいますか?」

「いやここで十分だ」

「そうでしたか」

「で、詳しいことを教えてくれるか」

「はい――」


 私は村長から詳しく話を聞く。

 どうやらゴブリンの群れは一週間ほど前からちょくちょく見かけるようになったそうだ。しかしその時は一匹しか見かけずただのはぐれかと無視していたようだ。村にはゴブリン一匹討伐できるような人はいないそうなので仕方がない。

 だがそれから数日して村の畑が荒らされるようになったそうだ。

 そして被害が無視できないものになり昨日、ギルドに依頼を出したようだ。


「詳しい数は分かるか?」

「すみません分かりません」

「そうか……ゴブリンはどこから来たんだ?」

「おそらくあちらでしょう」


 村長は村の外を指差す。そこは木に覆われた小高い丘だった。木々のせいで見通しは悪い。だが――


「あそこには洞窟があるのです。おそらくゴブリンたちはそこを拠点にしているでしょう」

「ふむ……」


 私は確かに感じ取っていた、ゴブリンの気配を。

 数は……百体ほど。中にはゴブリンジェネラルやゴブリンロードらしき他と比べると強者の気配もする。


「これはヤバいな」

「? どうしました?」

「いや大丈夫だ。それじゃあ私は行って来る」

「あっ、はいっ、もう行くので?」

「ああ、これは早いほうがいい。すぐ戻る」


 私はそう言い残してガリアに丘へ向かうよう指示する。

 瞬く間に景色が流れる。すぐに丘へ着く。

 そして洞窟があるだろう場所を目指す。

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