27ロリ チンピラAとBが現れた


「おいおい、いつからここは幼稚園になったんだぁ?」


 チンピラ二人が私を睨む。


「おいガキ、ガキは家でママの乳でも吸ってな」

「ギャハハハハっっ!!」


 緑色のモヒカンのチンピラAが私の目線までしゃがんで威圧する。


「また貴方たちですか! いい加減やめなさい! 冒険者資格を剥奪しますよ!」


 こいつらは常習犯なようで受付嬢も大声をあげる。


「うるせぇなぁ、あぁ? 誰のおかげでこの街があると思ってんだ?」

「それはっ……」

「どうしたんだ?」

「この二人はこの街唯一のシルバー等級です。彼らのおかげでたまに来る魔物の襲撃も防げていますっ」

「ああこいつらがいなくなったら困るのか」


 力に溺れたのか自分勝手に行動しているらしく、受付嬢を脅したりして剥奪や処罰を免れているとか。

 自分勝手な行動といえば彼らは街を救っていることを恩に着せてタダ食いをしていることが多いそうだが、本当に街を救っているから余計にタチが悪い。

 私はため息をつく。


「こんなゴミ、さっさと死ねばいいのにな」


 ボソッと言ったことだがチンピラ二人にはしっかりと聞こえていたらいい。

 受付嬢はあわあわと慌てている。


「誰がゴミだ。あぁ?」

「お前に言ってるんだ。そんなことも分からないのか? さすがだな」

「このガキっ、ぶっ殺すぞ!」


 チンピラAが私の首を掴んで持ち上げる。


「俺がこのまま手の力強めたらどうなるんだろうなぁ」

「脅ししかできないのか?」

「このガキっ、わざわざやらなかったものをっ」


 男は私の挑発に易々とのり、手の力を強める。


「手を離しなさい!」


 受付嬢がチンピAの手を離させようとする。周りにいた冒険者たちも男を止めようとする。


「はぁ、弱いな」

「何? ――痛っ!」


 私は男の手首を掴む。私は手の力を強めれば男の手首からメキメキとなってはいけない音がする。

 男は苦悶の声を上げ手を離す。だが私は手を離さない。徐々に力を強めていく。

 これでもほんのちょっとの力しか出していないのだが今にも男の手首があらぬ方向に折れてしまいそうだ。


(これからの手加減のために実験体になってくれ)

ボキッ

「ギャアァァァァ!!」


 男の手首を折る。男は絶叫する。

 すぐさまチンピラBがAに駆け寄る。


「おい、大丈夫か!」

「手首が、手首がぁ……」

「……死ね! このクソガキ!」


 Bが腕を振り上げて私を殴ろうとする。

 Aが手首を折られたという事実に一時呆然としていた冒険者たちはその男の行動を止めることができず、男の拳が私の顔に吸い込まれ――


パシッ!


 ――なかった。

 私は男の拳を手の平で受け止める。

 この男の力は普通の冒険者からすれば強いのだろう。しかし『世界最恐の森』と言われている森で育った私にはあまりにも弱すぎた。


 私は男の胸を撫でる。


 たったそれだけの動作。

 しかしたったそれだけの動作で男は吹き飛ぶ。

 男は食事処の丸机まで吹きとび、丸机に広げられていた酒やつまみを下敷きにして倒れる。勢いをつけすぎたのか丸机が二つに割れる。


「「「「……え?」」」」


 冒険者たちは素っ頓狂な声を上げて立ち尽くす。


「弱い、弱すぎる。あまり、私を舐めるなよ?」


 Aは全身を震わせて私に恐怖している。

 Bは全身に酒やつまみを浴び気絶している。

 冒険者たちは呆然としていた。


「え、えっ? ……え?」


 冒険者たちはまだ状況を飲み込めていないようだ。


「おい、大きい音がしたが大丈夫か?」


 ギルドの扉を開けガリアが顔を出す。


「おい、前で待っててくれって言っただろ」

「すまない」

「しかも喋ってるし」

「はっ!?」


 しまった! と今更気づくガリア。


「「「「え、えぇーーーーー!?」」」」


 ガリアは大狼だ。威圧感は半端ない。冒険者たちが驚きの声を上げる。

 Aは今にも気絶しそうで全身を震わせている。

 なんだ? お前だけ地震か?

 それほどに震えていた。


「よいしょっと」


 私は気絶しているBの足首をもって引きずる。

 一緒にAの襟首を掴み引きずる。


「受付嬢、私がこいつらを“善良な”冒険者にしてやるよ。迷惑かけたな。修理代は後でこいつらから取ってくれ」


 私はそう言い残してギルドを立ち去る。



 翌日、「「今まで迷惑かけて申し訳ありませんでした!! これからは誠心誠意この街に尽くします!!」」と本当に善良な冒険者に生まれ変わった元チンピラ二人を見た冒険者や受付嬢たちはさらに驚愕するのだった。

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