22ロリ 夜明け

 血だらけになりながらも天使のようであった。

 その優しい微笑みは神の微笑みのようであった。

 そんな彼女に可愛い、と思った。


 それがガリアが朦朧とする意識の中見たクルシュへの気持ちだ。


 ガリアは知らない。クルシュが転生者であり、元男だということを。

 もし仮にそんなことを知っていたとしてもガリアには関係ないのかもしれない。なぜなら恋に性別など関係ないから。


 そうガリアはクルシュに、恋心を抱いた。



 ◇◇◇


 温かい。

 安心するような心地よさ。


 私はほわほわした頭を必死に働かせて状況を調べる。


 確か、月の魔女とやらが襲ってきて……

 それでどうしたっけな。

 そうだ、魔女がリリ達を……ッッ!!


 私は勢いよく頭を起こす。


「リr――」

ゴチンッ!

「あだぁっ!?」

「――いっ……!?」


 鈍い音がする。誰かの頭とぶつかったか。

 私はズキズキと痛む頭を抑えてゆっくりと顔を上げる。

 目の前には同じく頭を抑えて悶えているリリの姿が。


「クルシュっ! いきなり起きたら痛いn――」

「リリっ!」

「――ぐえっ」


 私はリリに抱きつく。


「リリっリリっ、良かったっ……良かったっ……っ」

「クルシュ……心配かけてごめんなの」


 リリも私を抱き返して私の頭を撫で撫でよしよしする。


「我も起きたら血だらけのクルシュが倒れてるしびっくりしたの」

「ああっ、ごめんなっごめんなっ」


 私は強くリリを抱きしめリリが生きていることを実感する。

 少ししつこいだろうか。でもリリは嫌がることなく、むしろ私を慰めてくれる。


 少しして私は落ち着きを取り戻しリリを離す。リリも少し名残惜しそうにしていたが離してくれる。


「で今はどういう状況なんだ」

「えっとね今は我が起きてもう丸一日が経っているの」

「え、そんなに寝てたのか」

「そうなの。我とアルテナが起きてクルシュの治療をしてなかったら最悪死んでたの。なんとか治ったから良かったの」

「そうか……その、心配かけたな」

「うん。それでクルシュの治療も終わって後はクルシュが目覚めるだけになって、我は森を回復させたの」


 森は未だに空白地帯が見られるがある程度は元の姿を取り戻している。

 さすがはリリだ。


「そういえばガリアとレヴァは」

「あの二人ならもう大丈夫なの。ガリアはクルシュが治してくれたの?」

「ああ」

「ありがとうなの。今ではすっかり元気になってるの。ほら」


 ちょうどガリアが獣化の状態で駆けてくる。


「クルシュ殿っ、ご無事でよかった……」

「ああ、私はこの通り元気だ。心配かけてすまんな」


 私は無意識のうちにガリアの頭を撫でる。

 ガリアは心地よさそうに喉を鳴らす。


『おお、起きたかクルシュよ』

「レヴァ」


 レヴァも現れる。

 欠けていたりした鱗も元通り。

 以前の神龍の威厳が戻っている。


「ともかく皆んな無事だったの」

「そうか」


 魔物たちは少しばかり死んでしまったものもいるが大半はアルテナが咄嗟に避難させてくれたおかげで無事らしい。

 今回も流石の機転を利かせるアルテナ。


 何はともあれ今回の月の魔女襲来はそれほど被害を出さずに済んだようだ。

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