57ロリ 昼食、いやランチ

 第二試合が終わり一時間半の昼休憩となった。この時間に観客らや参加者らは昼食を食べる。そのためコロシアムの周囲の広場には屋台がこれでもかと出店し大変な賑わいとなっている。

 私はそんな屋台で食べてみたかったものだがこちらはこちらで用意されているらしい。私たちは特一級観戦席を後にして昼食の用意されている部屋に移動する。


 コロシアム内を少しばかり歩きとある扉の前についた。おそらくここが昼食を取る場所だろう。扉から豪華である。

 帝国の使用人二人が両開きの扉を開き私たちを招き入れる。

 そこには一つの大きな机と九つの椅子が用意されていた。室内の家具一つ一つが高級品で壁紙や天井、床のカーペットも高級なものだろうと容易に予測できる。

 私とシルヴィはそんな部屋に圧倒されながらも使用人に案内され椅子に座る。アッガースや妻のアウレリファ、息子のオルグ、娘のソフィア、メルヘヴン、支部長フランも同時に席につく。ガリアは今だけ獣化を解き席につく。


 そしてしばらくして数々の料理が運ばれる。焼き立てのパン、サラダ、ステーキ、スープ……。高級レストランで目にするような料理の数々で名前の知らないものが多い。フルコースのように一品一品出さないのはこの国の文化か、それとも作法に疎い私たちに気遣ってか。


「さて料理も運ばれたことだし乾杯とするか。シルヴィもクルシュも限界そうだからな」


 私たちは垂れそうになる涎をすすって料理を見つめる。


「では、乾杯」

「「「「乾杯」」」」


 私はワイングラスに入れられたワイン――ではなく葡萄ジュースを口に含む。

 たかが葡萄ジュースと思っていた私がバカだった。これも高級な葡萄でも使っているのだろうか。果汁百パーセントのストレートタイプというものだろう、葡萄の味を舌全体で味わう。

 美味いっ。私の語彙ではこれが限界だっ。


 そしてようやく私は昼食、いやランチに手をつける。ランチの方が上品さが出ていそうだ。

 さてまずはサラダだ。フォークでサラダを口に運ぶ。シャキシャキと葉物の音がする。新鮮な野菜だ。ドレッシングも美味しい。

 ステーキをナイフで一口サイズに切り、フォークで刺し口に運ぶ。肉汁が口の中を満たす。


「ん〜まいっ」

「だろうなっ。なにせうちの超一流のシェフが作っているからな。美味いに決まってる」


 自慢げに話すアッガース。


「ところでクルシュよ。お前はどう思う? ダイス・ジェントとか言う男のことを。強いか?」

「うーん……」


 ダイス・ジェントをどう思うか。

 あいつは本気で戦っていなかったからちゃんとした実力は分からない。


「他の奴らは知らんが準々決勝か準決勝、頑張れば決勝にはいけるんじゃないか? まあ他の本戦にいく奴を見ない限りは分からん」

「ふむ、そうか。お前と戦ったらどうなる?」

「私が勝つに決まっているだろう」

「はははっ、断言するかっ」


 パンと肉、合うぞっ。美味っ。


「ソフィアはどうだ?」


 アッガースは娘のソフィアを見る。


わたくしと彼とでしたら良い勝負ではないでしょうか。彼と戦うことになったら楽しみです」

「ん? 戦う?」


 私はソフィアの言葉に疑問を抱く。こいつ出るのか? 後日の予選に出るのか?


「ええ、私も本戦から参加いたしますわ」

「本戦からなのか」

「ああ本戦から参加できるのはゲストだけでな、今年はソフィアと前回優勝者、前回準優勝者が出る」

「ほおそうだったのか」

「クルシュ様は私を応援してくださいまし」

「おう、もちろんだ」


 私はソフィアを応援することを約束し、ランチを堪能する。

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