56ロリ 武闘祭―予選第二試合

 闘技場に第二グループが集まる。

 そして全員が揃ったことを確認して、ゴーーンッと鐘の音で試合が始まる。

 私は先ほどの試合で興奮しておりこの第二試合ではどのような激戦が繰り広げられるのか、わくわくしていた。しかしこの第二試合は私を大きく裏切ることとなった。


「ふぅんっっ」


 とある男が闘気を放つ。放たれた闘気は闘技場を駆け一度に九十人弱を気絶させる。その余波は観客にも届き一般人がばったばったと気絶する。その闘気は私のいる席にも届き肌をびりびりと震わせる。この場に居合わせるのは誰もが相応の強さを誇っているため気絶するようなやつはいないが、オルグ坊はなんとか意識を保っている状態だ。


 唐突だがここで闘気について説明しよう。闘気とは竜人族の武闘家が使う『気』のことで、人族の言葉に言い換えるならば『魔力』だ。

 彼ら武闘家は『気(魔力)』を練り上げることによって洗練し、それを身体に巡らせるいわゆる『身体強化』を得意とする。それは人族が使うような一般的な普通の身体強化などとは格が違う。竜人族の使う身体強化は手指足指、身体の先端に至るまで、身体のありとあらゆる所にまで『気(魔力)』を張り巡らすのだ。せいぜいが掌までだったり、足までだったりの身体強化とはレベルが違うのだ、レベルが。

 そんな手指足指まで身体強化をすることができれば指一本で岩を砕けたりすることができる。ちなみに私もできる。


 さて今回彼がしたのは『覇気』というもので、人族の言葉で『魔力波』である。それはその名の通り己の魔力を波のようにして体外に放出する、というものだ。これを応用すれば魔力感知ができるのだが今は置いておく。

 しかしただ放出するのではなく一気に、瞬間的に放出することがコツだ。そうすれば自分と近い実力未満の弱者は魔力酔いによって気絶する。使用者と同等以上の者のみが耐えられるのだ。今回は観客もいるからか加減はしていたようだが観客十数人は気絶してしまっている。使った彼もあちゃーと少しだけ反省している。

 説明終了。


 コロシアムはざわめきに包まれる。たった一瞬にして残り五人弱となったのだ。

 しかし何とか彼の『覇気』に耐えた者も杖や剣でなんとか体を支えており、今にも倒れてしまいそうだ。もし彼が手加減をせずに『覇気』をしていたなら全滅していただろう。


 彼は腰を低くし構えの姿勢になる。そして――


「龍震拳―龍歩」


 ――消える。

 否、目にも映らぬ速さで駆け出しただけだ。これは縮地と似ている。

 そして彼は生き残っている参加者の前に現れ、拳を繰り出す。


「龍震拳―震掌」

「がっ――」

「ぐえっ――」


 綺麗な、手本とも言える正拳突きは参加者二人を場外へ吹き飛ばす。

 これで残り五人となった。本来なら試合はこれで終了してもいい。だが彼は止まらなかった。

 龍歩で参加者の前に出現し、震拳で吹き飛ばす。


 別に残り五人になったら試合を終了しなければいけないというルールはない。なのでやりたければやっていのだ。だがてっきり終わると思っていた参加者らはろくな防御も取ることもできずに退場させられる。

 そして残り最後の一人となり。


「ま、待ってくれっ、降参っ、降参す――がはっ」


 男は降参をしたものの正拳突きをしっかりとくらい場外に吹き飛ばされ気絶する。

 なぜ攻撃したのか――。


「む? 何か言ったか? というかもう終わりか。つまらん」


 集中していて聞こえていなかっただけであった。


『しょ、勝者、ダイス・ジェント、ただ一人! 第二グループからはダイス・ジェント一人の本戦進出だー!』


 どうやら彼はダイス・ジェントというらしい。毎回試合を観戦しているアッガースらも知らなかったので今年が初参戦なのだろう。彼の活躍に期待したい。


 こうして第二グループはあっという間に決着がついて終了した。

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