第27話 自信はなくとも、尊厳はある
そう言えば、大人になってからよく言われるんだけれども。
「自信を持ってほしい」
という言葉。
そうね、私、自信がないかもしれないわ。
頑張っても、成果が出ても、なんだか周りからは軽視されてきたわ。
どうしてかしら。
私、欠けたところなんて、イッコもないのに。
胸も腰もボンキュッボンで足首はキュッと締まっているのに、頭だってそう悪いわけでもないのに、誉められたことがないわ。
頑張れば頑張るほどに、けなされて貶められてきたのよ。
就職氷河期なのに大学行ったからかしら? 入学したとたん、「なまじっか大学行った人よりも、専門学校を出た人の方がマシ」って雑誌で取り上げられ始めた。
これはもう、タイミングがよろしくなかった、としか……。
ううん、根源的な問題なのはわかっているの。
国際大学入って、留学して、そこからが大変だった。
英国って、すごい差別主義の国だったのよ。
そんな国で胸張って生きるためには、周囲に自分の価値ってものを、示し続けなくてはならない。
しかし、とっかかりも見つからなくて、へきえきしてた。
それなのに、彼氏ができちゃって、これもなあ……悩みの種だった。
とにかく論文の書き方どころか、お金の数え方や時計の読み方もわからなくて、小学生レベルから授業が始まってやっと買い物に行けたの。
それから論文には、型があるって知って、その通りに書いていた。
もちろん、教科書の丸写しだったけれども。
それなりに必死だったんだわ。
それなのに、彼氏が毎朝、私の部屋へ来てね……私が朝のシャワーを終えて戻ると、ベッドの中に寝そべっていて、驚いたのと信じられないのとで軽くパニくって、それが結局破局のもとになったのよ。
あの人の頭の中身、どうかしてるとしか思えない! 非常識。
私、手紙で母に「寮に男子が入りこんで困ってる」って言ったら、学校側に働きかけてくれたらしくて、女子寮は男子禁制になったのよ。
ほっとしたわー。
でも、他の女子に恨まれないかなってちょっと心配だったから、母から電話があったとき「余計なことはしないで」って言っちゃった。
彼氏のことに関しては、他の女子にも相談したの。
部屋に遊びに来るから、部屋の窓もドアもあけ放っているのに、気づくとドアを閉め切ったりして、妖しいムードを作ろうとして、しまいには部屋に泊まろうとするの! ベッドはもちろん、一つしかないのに! 一緒に寝ようってわけ? 信じらんない!
友だちは、もちろん、そんな男、叩きだせって言った。
だけど、私、可哀想でできなかったのよ。
色が浅黒くて、後ろ姿がしなしなっとして、ぶーたれた顔つきがちょっと下の妹に似てたから、ほうっておけない感じがした。
だけど、別れた後、私のことヤリマンって噂を立ててくれて、ちょっとした騒動になった。
いくら私から別れるって言ったからって、逆恨みはやめてよね! プン!
初めて深い付き合いなんてものをしたわけだし、妙なしこりを残したくなかった。
できれば、友達に戻って、仲良くできたらなあって思ってた。
だけど、奴、暴力振るったんだもん。
太もものところ、どっかんどっかん蹴ってきて、身動きできなくなる痛さだった。
だけども、そんなの父親のしつけでなれてるから、呻き一つ立てない私だったのよ。
まあ、そんな体罰に慣れてるっていうのも、考えものでね。
自分の人間としての尊厳を踏みにじられてるのに、ガマン一辺倒なわけでしょう?
もう、あきらかに、人間らしさをもぎ取られてったわよね。
私が自信ないのはそういうわけ。
初めての人に、やりたい放題されて、参っちゃったの。
だから、男の人はちょっとね……。
苦労知らずのボクちゃんも、女は自分の思い通りになるって信じてるみたいなところがあったから、バンバンふった。
女に生まれて後悔させる男は、金輪際ごめんなのだわ。
ちょっとでも、私をいいように扱おうって腹を見せたら、即噛みつくからね! ええ、ゆるさない。
なんたって、私は心がピッカピカのパーフェクト美人! なのだから!
私の価値を損ねるような男となんて、つきあうわけないでしょう。
心根のいやしい、俺様マザコン男子なんて、もってのほかよ!
そんな私だから、昨今の少女漫画なんて、おもしろくもなんともない。
カベドンとか、そんな男なぐってやんなさい、とヒロインに思うし。
強引なあれやこれやも、絶対NG! そんな漫画がいいと思ってるのは、恋愛経験0ね! 0!
私はレディコミ読んだって、退屈だし、いまいちわかんない。
少年誌は、コンセプトがはっきりしてるのがわかりやすいわね。
全年齢対象の、ギャグマンガが大好きです! 最高ね!
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