　藤咲あゆな先生の『天国の犬ものがたり～僕の魔法～』の『MY　HERO』がとてもよかった。

　遭難している（現在形）「俺」と同級生の女の子。

　女の子は左足首を怪我して歩けない。

「俺」は、女の子を背負って、山を降りるけれど――どちらがもといた町なのかがわからない。

　物語は過去にもどり、「俺」が拾って育てた犬「甲斐」を、山の中のお寺の木に縛り付けて捨ててしまうのだが、直後に「俺」は崖下に落下、遭難してしまう。

　助けてくれたのは、「俺」が捨てたはずの「甲斐」だった。

「甲斐」は死にものぐるいで、縛り付けていたリードを引きちぎり、麓の人を呼びに行ってくれたのだ。

　そのことがあって、「俺」はこんどこそ大事な人を見捨てない、と決め、倒れるまで頑張り続ける。

　倒れた「俺」の前に、再び、死んだはずの「甲斐」が現れ――後について進んだ「俺」と女の子は助かったのだった。

　犬は一度受けた恩を、死ぬまで、いや、死んでも忘れないのだ……。

　この物語は、現在の苦境に挑む主人公「俺」の「甲斐」への想いがそれを支える、その理由を語る話だ。

　苦しいときに、救ってくれたのは誰なのか。

　その恩に報いるのにためらいはいらないのだ――というお話。

　とても男らしい。

　藤咲先生、男らしいぞ！　女の方だけれど。

　旦那さんのあらいりゅうじ先生が、かわりに書いてらっしゃるんだろうか。

（たまにそういうこともあるらしい）

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