第10話 傷心




 実は7月下旬に、子猫の里親を探している人がいたので、連絡を入れた。


 母が薬局で見つけてきたのだが、連絡先はケータイ番号だけで、お名前がわからない。


 んだから、まず留守電に名乗りを入れて、二度目で通じたので話してみた。


 Y溝さんという方だった。




「里親になってくれる人には、条件があるんですよ」




 というから、いろいろ聞いたが、オールクリア。


 写真の子猫は、サバトラのスカーフ手袋付き。


 なんとなく、以前飼っていたアメリカンショートヘアに似ていた。


 8月の4日に、ぺトン鎌倉というペットショップ(グッズのみ)に里親会で来るから、交渉してくれという。




 どうして7月中に、引き渡しできなかったのか、というと……。


 8月に動物愛護協会に引き渡して、避妊手術を安価でしてもらい、ワクチンもそこで打つんだという。


 へえ。


 動物愛護協会、やるな、と思った。




 しかし、今日行ってみたら、その子は来ていなくて、ワクチンをしている最中だという。


 その上、里親になるには家族がいなくてはダメ、55歳以下でないとダメ、結婚してないとダメ、と断られた。


 なぜかというと、これから20年間、なにがあっても猫を面倒みられる保証があるかないか、人間の都合でふりまわされる猫にはストレスがかかるから、という。




 まあ、子猫はそんな境遇になったのには、いろいろ理由や事情があるんでしょう。




 けど、わたしにも、結婚しない理由はあるんだからね!




 ご縁がなかったということであきらめた。


 そういえば、家を出る前にみょうな不安感が胸にあって、なんだかいい予感がしなかったのだ。


 それは、虫の知らせだったのだな、と今では思う。


 傷心なので近所のペットショップによったら、おもしろい模様のスコティッシュフォールドがたくさんいて、癒された。




 アメリカンショートヘアは6万円から7万円。


 スコティッシュフォールドは7万円から13万円。


 9月生まれの子は11月、12月に販売されるらしいから、今からお金を作れば、買える。


 そうよ、ペットショップの猫のいいところは、飼い主の都合に合わせてくれるところ!




 だいたい、用事で家を空けるときには、ペットホテルってものがあるのだから!




 こちらが難癖つけられる側になんて、ならなくていい。


 動物愛護協会の猫は、品種も選べないし、家の中までもじろじろ見られるらしいから。


 実は私は、ヒマラヤンかペルシャ猫が飼いたいの。


 純血種の礼儀正しい、青い目の、真白な長毛種がよいのよ!




 だから、動物愛護協会には丁寧にあいさつをして、遠慮することにした。




 結婚してなくて、悪かったわね!

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