第31話 いや、だってもう、心配でしんぱいで!
心配はするのだ。
親せきの子どものことだが。
何歳になっても心配なのだ。
一番下の妹の次男が、かわいいんだけれど、性格が。
かわいすぎて、同じクラスの「すごい子」と組まされるくらい。
本当にロマンチックで人当りがソフトな男の子なの。
「ボクは、人気者なんだよー。みんながかわいいって言ってくれる」
って、お風呂場で呟いていたのを、ママが聞いていて、親戚中にばらまいてくれたから、笑っちゃった。
そんなポケポケしたところの、おかしさと変わり種らしさ。
こういうキャラはいたことなかった、身近には。
キョーレツにおかしかったけれども、そんなところもかわいくて。
子供のナルシシズムは、社会に出たら打ち砕かれるものだけれども、彼は人間関係でうまくやっていけそうだし、きっと大丈夫だ。
とは思えど、世の中にはいろんな人がいるから、やっぱり心配。
Kくん(6歳)は、感情がそのまま表情にでるから、だからかわいいのよ。
到底悪いことを考えられない子なの。
うん、なんというか。
心の中にポカッと穴が空いていて、そこに宇宙を感じる。
相手を見てモノを言うから、へまはやらないと思うけれど。
いじめにあっても、自力でなんとかしようとするから、心配。
お兄ちゃんのYくん(9歳)との折り合いの悪さも、彼の方がめいっぱい努力して合わせてる感じだ。
親せきの前でYくんを立てたり、お兄ちゃんはすごいんだと触れまわったり、そういう大人の努力をしてしまう。
だけど……。
子供の世界で、裏目に出ないといいな、と思う。
実際、いくらお兄ちゃんを立てても、Yくんは変わらなかったし、おもしろがっていたぶってくるし。
将来、Kくんがほんの少しくらい、いじわるや、いけないことをしてしまっても、今の彼ができうるだけの努力をした跡を、決して忘れまいと思う。
Kくんは実は頭の回転が速い子。
頭がよすぎる子は、長生きしないってシェイクスピアが言ってた。
だから、心配なの。
思春期になって、まだあの努力を続けていたら、いじめっ子に利用されてしまうかもしれない。
サンドバッグにされたら、どうしよう! だめよ、だめだめ!
Kくんには、危険なものには近づいてほしくないし、まず、危険なものは危険だと気づいてほしい。
昔はYくんがいじわるすると、急所をねらってドカン! ってカカト落とししてたじゃない? それくらいでいいの。
変に自分の中に抱えこまれると、たぶん、ママにもわからないと思う。
それで……それで、いつか。
『母さん、弁当おいしかったよ』
とか! そんなことを書き残して自殺しちゃったりしたら、取り返しがつかない! こわい!
子供って、やわやわしていて、本当に危ないと思う。
どれだけ気を遣って育ててるの? 世の親は!?
妹がノイローゼにならずに、平気で母親の前で疲れた顔をしてられるのはなぜなんだろうか。
子供どころか、夫もいない私にはとってもわからないのだが。
あの、ふらふらとして、柔い生き物をして、『猛獣』とか『怪獣』とかいう神経がわからないわ、まず!
子供は、騒がしいのだろう。
大人が、追いつかないくらいの速さで、成長しているのだろう。
小さい子はまだ、幼稚園の先生レベルの対応で、だいじょうぶだろう。
しかし、中学生、高校生となっていき、大人に近づくにつれ、友達との距離やら恋愛やらで、その心は複雑になっていくだろう。
親はそのスピードについていけるのか? フォローしきれるのか? 理屈じゃない、心身共に大丈夫なのか?
下の子が大人になるころ、妹夫婦はもう、熟年だ。
だいじょうぶか? 耐えきれるか? その時々で、助けてくれる人はいるのか?
子供らを危険から守り、遠ざけ、回避させる……それだけの体力が残っているのか?
ひつようなのは、経済力だけではないんである。
社会情勢も変わってきている。
子供らが大人になって、何を思うだろうか。
りっぱに生き抜いてゆけるだろうか?
そういうことが心配なのだ。
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