第49話 ミドリムシのホラー
ホラーが苦手で苦手で、他人様の書いたものを読めなくて弱っていた。
しかし、読まないというのは怠慢だ。
おかげで、怖いホラーが書けない。
いや、以前は他者さまのホラーも拝読してた。
だけどー。
こわいのやだからー……。
って言って避けてたら、いざ自分で書いても「ブラックユーモア」に見えるとか、「笑ってしまう」とか言われるようになってしまった。
だってー、自分で書くにしたって、怖いのがいやあんなのだ!
本気で本当にいやなのだ。
これでも一応、ホラーの書き方の本は読んだ。
東洋のホラーじゃなくて、西洋のホラーだ。
モルグ街の殺人(あれはホラーだっけ?)とか、キングコングとか。
とにかく、か弱い女性を巨大生物がわしづかみしてふりまわすという、タイプの……。
オールドタイプかもしれないが、基本は抑えてるつもりなのに、なぜか「恋愛ものとしてはまあまあだけど…‥」って言われてしまう。
これじゃいけないなとは思った。
企画もので「ホラー」か「ミステリー」という課題を受けて、書いてみたはいいものの。
「ホラーとして弱い」と致命的なことを言われる。
じゃあ、主人公が人外で、ラブのために正体を現してバトルする話にしよう! と決心。
しかし、「あなたの一人称、とっつきにくい」とか、「全然怖くなかったよ」と。
じゃあ、どうすればいいんだと尋ねたらば。
「もっと怖いことが起こらないと。ありえないこととか」
はい? 3000文字でできるかな。
むずかしい。
ちなみに、母が怖いと思うシチュエーションは以下。
「近くに置いてあったはずの、実験データが消える」
「実験していたら、煙が上がって、化物が生まれてくる」
私は言った。
「物理の実験て、化学変化は行わないよ。斜面を転がる球の観察とか、滑車に働く力とか、重しをつけたバネの伸び具合とかを見るんだよ? それで化物が生まれるのってちょっとあり得ない」
「実験は実験でも、科学とかならわかる。理科実験とか。プレパラートで見ていたミドリムシがいつのまにか出てきて、家までついてくるとか」
ここまで言ったら、母は目をそらした。
あかん。
またギャグだと思われてるな。
ストーカーするミドリムシ、怖いと思うんだけど。
巨大化して、背後にいたら、びっくりすると思う。
巨大なミドリムシに人間が食べられる話、私は怖い。
多分、書かないと思う。
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