SANAGI~私は今~

れなれな(水木レナ)

第1話 富士見L文庫×COMIC BRIDGE

『頑張る女子主人公』の文字を見る。


 なあにー? これ。


 まるっきり、私のことじゃん! 私、頑張ってる。


 ストレスでひげが生えるほど、ギリギリのラインで、遊びながら頑張っている。




 遊びながらっていっても、文字書き目指している私の、ささやかな息抜き。


 その名もココミュというサイト!


 普通に詩というか、ポエムを投稿している。


 激烈に悲しかったり、とんでもなく虚しかったり、立ち直りたいときに、胸の内をこっそりと、短い文に託して公表しているの。




 忘れたいこともある。


 忘れられないこともある。


 そんな中で、自分に赦していい範囲で、息抜きをすると……。


 そう、文章にこめるしかないのだ。




 ここに投稿すると……アマチュアだったり、セミプロだったりする声優さんが、台本として読み上げてくれるの!


 たいへん、有意義よ。


 自分の中の言葉を、他人の声で聴くって、すごく新鮮。


 そして、数々の演出や音楽などで、まったく想像もつかなかったワールドが形成されたりするの!




 イラストも、もちろん投稿OK。


 私、一時期あこがれたんだー。


 自分の書いた台本で、演技してくれる人がいて、さらにそれをドラマにするの!


 音楽、効果音はフリー素材で、無料で公開!




 ココミュは、サイト自体がまだ新しく、前身のこえ部っていうところに比べるとちょっと寂しげだ。


 なんだろうな。


 個人同士の存在が、一人一人、孤立してる感じがするの。


 だから、新しく会員になる(無料)人は、お友達をつくらないと、続かないと思う。




 まあ、メッセージ欄では、完璧に個人同士の付き合いになるから、仲のいいお友達とまったりしたい人にはグッドよ。


 私は、本当に個人的な理由で、利用させてもらってるから、あんまりメッセージ欄は使いこなせてないんだけれどね。


 話の続くお友達もあんまり。


 だけど、これまで書いてきたとおりだから、不満はそうないの。




 ココミュはロバの耳よ。


 そして、カクヨムは、修行の場。


 そうそう。


 カクヨムはKADOKAWAのサイトで、書くことと読むことができる。




 あ、今、「チコちゃんに叱られる!」で、涼しいものテーマで、二級河川を紹介してた。


 音楽が始まったと思ったら「ゴール!」って言って終わる。


 日本一短い川。


 笑い転げたわ。




 なんだろ。


 右手の甲にじんましんが出てる。


 かゆい。


 今飲んでるんだけど、ウーロン茶で具合悪くなったことあるんだよなー。




 頑張り続けた私の体は、いったい何が原因で、調子が悪くなるか、わからない。


 頑張ってるのよ。


 本当なのよ。


 あ! 疑ってるー? 失礼しちゃう! 聞いておどろくな?




 私はねー……。




 隠れエリートだったのよ!


 ……言ってて、悲しくなってきた。


 正しくはエリート目指して、一直線の、地味で、目立たない女子だったわけ!


 いつか、花開くと信じていたし、それは今じゃないだけなんだって、自分を励ましてた。




 うんと頑張ったのよ。


 なにを目指してたかって? 忘れちゃったわ、そんなもん。


 大学へ行ったら、コネがものを言うので、大変な思いをしたとか、どーでもいい。


 私は学問をして、学者になりたかったのー! 図書館の司書教諭になって、趣味で文学的な何かを書ければいいなって、思ってた。




 だけど……なまじっか、エリート高校に入っちゃったから、父親がはしゃいじゃって、いろいろ圧力をかけてきて、もー大変だったんだから!


 部活もかけもちしていたら、いっこ辞めさせられたし、寸暇を惜しんで勉強して、大学へ入って、そしたらまた父親が騒いじゃって!




「おまえ、国家公務員になれるぞ!」




 とかいう。


 興味ないのに。


 困っちゃう。


 父は私が、自分の思い通りにいかないと、近所中に言いふらす癖があって、それがまた悪口雑言の数々。




 近所でも有名な毒舌家の鈴木さん(仮名)に、挨拶したら、普通に罵詈雑言をはかれた思い出がある。


「勉強してないくせに、あのエリート校に入れるなんて、頭がいいのねー」


 っていうから、仕方なく言ってやった。


「鈴木さん(仮名)は、エリート大学へ行ってたんですよね。頭がいいんですねー」




 それで、だまったから、よしとしよう。




 ――勝った!




 って、勝ってないのか。


 こびへつらっただけだ。


 とほ。


 でも最近、その鈴木さん(仮名)もお亡くなりになって、兄だか、夫だかに看取られたって話。




 幸せじゃないの。




 今は鈴木さん(仮名)宅は、もぬけの殻。


 表札こそ出ているけれど、それも黒くにじんじゃってるし、公園前に出してたプランターも、門の中にある。


 その門は、針金でぐるぐる巻きにして、固定してあるから、無人なのはよく見ればわかる。


 いいおうちなのに、雨戸も閉め切ったきりだし、身内の方もよりつかないらしい。




 まあ、毒舌すごい人だったから。


 人間関係も推して知るべし。


 うちの父って、そういう人と仲良くなるのがうまいんだ。


 まあ、まず身内の愚痴をこぼして相手の心に入りこむ。




 それから、言いたい放題するわけよ。




 どうして、頑張ってるのに、水を差されないといけないの?


 一日、学校以外の時間は、ほとんど勉強してたのよ?


 9時間よ、9時間! 合計してね。


 朝起きて三十分、ごはんの後で十五分、内職なんてしないで、休み時間の十五分……それから、それから。




 図書委員と美化委員をかけもちして、部活もやって、学級内では合唱コンクール係。


 生徒会と仲良くて、なぜか卒業前の文化祭のときに、私の描いた絵が採用されて、なんと一辺が四メートルくらいある、巨大画制作にたった一人で狩り出された。


 彩色には自信がない、と言ったら、それはちぎり絵で、文化祭委員で分担してくれた。




 無私よ、無私!


 私、なんにも考えないで、ただひたすらに、奉仕活動してた!


 それが、内申にどう関わるかなんて、考えもしなかった。


 がむしゃらだったから!




 頑張れる自分が好きだった。


 頑張ってる自分に誇りを持ってた。


 頑張れ、なんて誰にも言われなかった。


 だって、私は頑張っていたから!




 別に、勉強だけを、やってたわけじゃないのよ?


 家族に気づかい、家事手伝いしてたわ。


 妹がすぐそこのバレエ教室に通うために、母の車を当てにしている間に、私は掃除洗濯、洗い物をしてた!


 なのに、うちの家族は、私が怠けているって言った! あのねー、どこをどう見たらそう言う結論になるわけ? 私もう、ヘトヘトなのよ? ジョギングに筋トレしてても、クッタクタ、この意味わかる? 栄養不足なの!




 だから、これ以上は無理。


 オナカスイター! ガス欠です。


 愛情が足りてません、うちの家族。


 こんなに頑張っているのに――!




 私になにが足りないって……結婚? 結婚してないわ、私。


 妊娠、出産も? でも、自分の時間をとられるのが嫌。


 学生時代のご奉仕生活を、一生続けるなんてごめんだわ。


 尽くせば尽くすほど、周りの要求が増え続けるだけなんだから! 私、ドレイじゃないんだから、拒否る権利あるよね? 自由になりたい! だから私、仕事辞めました! どこでも無職で通してます! 親の扶養家族だけど、尽くした分は返してもらいます! いじめ抜かれたから! せいぜい、私に財産残してよね! 無駄遣いせずに。

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