第53話 人はなぜ争うのか

 ココミュの台本で、こういう内容のものがあった。


 人が争うのは、人より優越している自分が好きだからだと。


 うん……それじゃあ、争いをなくすには、どうすればいいの?




 考えてみたいと思う。




 自分が大好きだと、どうして争いになるのか。


 私、自分が好きだけれど、おとなしいから争いにならないよ。


 周りにいる人も、物静かだしね。




 争いの根底には、自分が大好きなだけではなく、自分の優越感を侵されるのが嫌だという気持ちがあるのかな、という論旨だった。


 その台本ではね、「自分の信じる正義が勝っている」と思ったら、それに逆らうものは全て悪になるんだって。


 そんなことってあるの?




 正義は人の数だけ、真実も人の数だけあるよ?


 それがあるから、争いになるのだとしたら、そんなものない方がいいのでは?


 でもそれも極論。




 ああ、でも。


 人との間でしないほうがいい話題、というのがあって。


 宗教、政治、(球団)の話は、ケンカになったら取り返しがつかないから避けるべきだと習った。




 うん……。


 そういえば、日本では「神様」の話をしてはいけないという決まりがある。


 かつて神様の名のもとに、戦争であばれたからだよね。




 GHQは、神様さえ、人間になってしまえば、日本が争うことはない、と判断したんだろう。


 けれど、経済面ではどうだろう。


 どこの世界も争っているよ? 食べていくためだし。




 それは優越感のためというよりも、生存への本能としか思えないし、人間としての活動をやめたくないんだという渇望に思える。




 話を戻しましょう。




 生存への本能だとして、人間は自分が大好きであることをやめない、またはやめるべきではないのか。


 これは、度が過ぎなければ、他者に対して譲り合いのマナーができている限りは、該当すると思う。


 自分を大好きすぎなければ、いいとも思う。




 もう一つ。


 人間としての活動をやめたくないと渇望するから、人間は自分が大好きであることをやめない、またはやめるべきではないのか。


 一面では当てはまるな。




 自分が嫌いだと、もしくは好きでないと、人間としての活動をやめてしまうことがあるからだ。


 青少年の自殺が増えてますね。


 もしかすると、もしかするかもしれない(強くは言い切れない)。




 では、人間は生存の本能として、争うのか。


 争いばかりが能ではないと思う。


 では、人間は人間としての活動をし続けるために、争うのか。




 争いは、美化すべきではないと、個人的に思ってはいる。


 しかし、争いは、人間としての生存の本能であり、活動への渇望なのか。


 そういう一面はある(といって濁す)




 しかし、それが全てではないと思うのだ。


 争わねば、自分がやられてしまう、殺されてしまう、そういうときもあるのではないか。


 そういうときに、生存本能だとか、生命活動への渇望だとかが当てはまる。




 つまり、争いは生命活動にとって、必要なときがある、ということだ。


 必要悪という落とし穴。


 それが、危険や有事の際には戦わねば! これは正義だ! という観念。




 本当に正義なのか?


 争わねば、死なねばならないから、生きたいから、戦うのではないのか?


 それを自己愛表現だとばかり標榜するのは間違っていないか?




 人は自分がかわいい。


 でもだからって、みんながみんな人殺しを選び、戦争するわけではない。


 武士の時代なんて、目上へのマナーを欠いただけで切腹とかあったのだ。




 切腹って、自分の手で、自分のおなかを切ります。


 これは、生存本能とか、生命活動への希求とかにはまるっきり逆らうものであります。


 こういう文化があったのだから、日本人は自分が大好きだから戦争やってきたわけでもないと思う。




 優越感が大事なんじゃなくて、名誉とか、子孫繁栄への希求とか、そんな大切なものが他にあったんじゃないのか。


 そして、それを自分が大好きだから、という言葉でまとめたのならば、その「自分」の中には「自分にまつわる全てのもの」が含まれてないとおかしい。




 自分の愛したもの、自分のDNAを受け継ぐもの、それを大好きだと思う気持ちは、自己愛という観念では片づけられないほど、強烈なものであると私は思う。


 その強烈な思いが、「自分以外のもの」への攻撃を行う、それが争いである。


 まあ、身内同士の争いというものも存在するから、「自分大好きだから」「争う」という観念が完全に否定しきれないのも確かだけれども。




「自分」をどれだけ過大解釈するかにもよるんじゃないかな。

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