第42話 心の中
苦しい、というと、母はこういう。
「難民生活の人はもっと苦しんでいるのよ」
と。
今現在、母によって苦しめられている私のことを無視するのだ。
バイト先で、セクハラとパワハラを受けて苦しんでいる、だからアルバイトを辞めるか変えるかしたい。
しかし、母が紹介してくれたバイトだから、一言相談してからにしよう、そういうとき。
母はセクハラが蔓延しているバイトを紹介してくれるくせに、悩みを打ち明けても非常に冷たい。
アルバイトは、家に食費を入れるためだ。
遊ぶためじゃないし、そもそもそんな暇などない。
だから、精神崩壊する前に、助けて欲しいと言っているのに。
セクハラとパワハラにあっている娘を前に、なんで「難民生活をしている人」の話をするのだ。
じゃあ、母には難民を救うことができるのか? できるわけないでしょう。
でも、目の前のあなたの娘は、あなたに相談しているのだから、少なくともたよりにはされているのだ。
それをつっぱねて、「食費を、生活費を、セクハラ受けてでも、パワハラされようとも支払え」というのか。
母よ、あなた、ズレてる!
アルバイトは辞めることができる。
上司に訴えて、セクハラやパワハラは辞めてもらうこともできる(理屈では)。
なのに、あなたはしょせん金ですか!?
おかしいでしょう。
「私、さみしいな」
というと、母は、
「おばあちゃんはね、小さい頃に母親を亡くしたから、母親がどんなものか知らずに育ったの」
という。
私がさみしいのは、母が、母親らしいやさしさを見せてくれないから、孤独に感じているのだ。
なのに、そこでどうして、祖母の話になるの?
よほど言いたい。
「おばあちゃんは今関係ない。私はお母さんが、無視し続けるから幼い頃から寂しかったんだよ」
と。
どうして祖母が不幸な目にあっていたからといって、私が母に無視され続けるのをガマンしなくてはならないの?
こちらを向いて? ちゃんと私を見てよ!
私、頑張ったよ。
お母さんの、望みの子になるって、頑張って、心を病んで、それでも頑張ってる。
どうして無視するの?
留学先から、英国紅茶を贈ったじゃない。
なんどもなんども、自分のものはさておいて、お母さんに贈り物をし続けたじゃない!?
フォーシーズンズのセットや、デューンの香水、流行りのコロン。
お母さんに認めてもらうためだけに、勉強もしたし、手紙も毎日のように書いて送ったのに!
私が発狂したのは、どうしてだと思ってるわけ?
私が苦しいときを見すましたように、冷たい言葉を吐きかけるのはどうしてよ?
私、きちんとしてるじゃない。
いつも笑顔で写真に写ってるじゃない。
お返事、ご挨拶、きちんとできる。
勉強もしている。
母の職場の人にもきちんとご挨拶してきた。
なにが気に入らなくて、私を苦しめるの?
もう、私ね、生きてるだけで苦しいの!
どうしてだか、自分でわからないくらい、めちゃめちゃ頑張ってきたけど、それでもお母さんは認めてくれないんだね!
もう、お母さんにやさしい言葉なんてかけない。
お母さんの気に入るような話なんて、書かない!
社会復帰もしない――!!
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