第77話 心がふわっとする
心がふわっとするような、そんな物語を書きたい。
ともすると、情念たっぷりの、血族のいざこざを書いてしまいがちなので。
うん、もっとこう、甘々な甘美な世界を書いてみたい。
それは、憧れだなあ。
自分が生きてきて、ついぞ縁のなかった世界だ。
もしかしたら、あったのかもしれないけれど。
それは成長するにしたがって、忘却したか、封印してきてしまった。
そうしないと、生きてこられなかったから。
強烈なギャグマンガ読んで、友達に貸して、一緒になって笑って。
そういう、乙女に遠い世界で生きてきた。
情熱的な世界を求めていた。
でもでも、キャラクターをつくるときに、血液型や星座なんてものを気にしたりするところは、乙女かな(自分で言う。言っちゃう)。
細木数子さんの六占星術、参考にしちゃうのは、マニアックかな。
けど、不思議とだれかに甘えてみたいだとか、考えない子だったんだよね。
そこはやっぱり、男だったから。
占いなんかにはまるのも、実は男の人に多いって話、聞いたことがある。
誰にも弱みを見せられない、相談できない、だから、占い師に打ち明けてアドバイスもらうの。
残念ながら、そういう気持ち、わかってしまう。私自身も、そうなんだ。
親友同士、集まって恋バナとかするでしょ。そうするともうだめ。
「誰のことが好きなの」
って言われて、好きな人も嫌いな人もいないよって答える日々だった。
すると、女の子は一様に、異常者を見るような目をしてきた。
「女らしくない」
って言われた。
私、女性らしい体型、維持してるんだけど。
いろいろ自分に、周りの審美眼にかなうよう、努力してるんだけれども。
そういう、隠れた努力を、もう、真っ向から否定されるの。
好きな人を打ち明けないだけで。
そりゃあ、好きな人、いたけど。失恋しちゃったんだよ。だから、聞かないでほしい。もう、会いたくても会えっこない、遠くへ行っちゃった人なんだから。
園児だったころの、幸せな初恋を、ずっと胸に抱いて忘れない私なのだから。
あの時、あの場所でしか得られなかった、私の初恋。
きれいなきれいな、思い出なんだから。
思い出すだけで、幸せなの。うん、初恋ってそういうのが好ましい。
好ましいっていうのは、そうでない人もいるかもしれない。おもんぱかりなのよ。
私は、変に男と女になったりせず、お友達感覚のさっぱりした付き合いがいいの。
ぐちゃぐちゃ、ねちょねちょ、思い悩むなんて時間がもったいないって思う性質なの。
他の人からみたら、全然ロマンチックじゃないかもしれない。でも、私はそういう自分のロマンチックを、他人の目にさらしたくない。それは残酷だから。
こと、恋に関しては、女の子は裏切ったり嫉妬したり、実に汚い面を持っている。
そういうの、我慢ならないの。遠ざけておきたい問題なの。だから、私の恋心には踏み込んでほしくない。
たとえ自称私の親友でも――。
私の一途な想いは、誰にも目の届かないところにしまっておいて、世の中の不正や、理不尽をギャグマンガで笑い飛ばす――それが私にとっては、心の平安のために必要だし、大切な時間なのだ。
そういうわけで、私はロマンチックが全然書けないけれども。
書いてみたいとは、思っている――一応。
勉強したら、書けるようになるかなあ……。
あんまり、いいことを書いても、その後の人生が不安だから、この作品はおしまいにします。
お読みくださった方、深く御礼申し上げるとともに、引き続きごひいきくださるよう、お願い申し上げます。
えへ、ちょっと、私にはぜいたくかな。
でも、ありがとう。心から。うれしいよ――大好き。
願わくば、また、お目にかかれますように。幾久しく、ご縁の続く限り。
『SANAGI~私は今~』-了-
SANAGI~私は今~ れなれな(水木レナ) @rena-rena
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